ネット通販の成長鈍化?

消費者向け電子商取引(BtoC―EC)市場が拡大している。経済産業省の調査によると、2017年度の市場規模は全体で前年度比9・1%増の16兆5054億円となり、16兆円を超えた。

内訳は、衣類や食品などのネット通販である「物販系EC」市場規模が8兆6008億円(前年度比7・5%増)で、全体の52%を占める。次いで、サービス系ECの5兆9568億円(同11・3%増)、デジタル系ECの1兆9478億円(同9・5%増)と続く。

ネット通販が依然として成長市場であることを示しているが、伸び率は16年度の10・6%に対して、17年度は7・5%と、拡大ペースがやや鈍化している。

単年での判断は困難であるが、経済産業省の調査報告書では、ネット通販のこれまでの経年推移と比較して、その成長にやや落ち着きがあった要因について、①国内個人消費の回復が対面物販へ流入②緩やかな成長期へ移行開始③事業者が二極化(売上を伸ばす事業者と停滞している事業者)④過当競争で同一商品の販売単価は低下――を仮説として立てている。

17年度は大手宅配便企業による料金値上げ要請や荷受け量の総量規制、時間帯指定配達の見直し、宅配ボックスの利用などが話題となった年だ。

国土交通省によれば、16年度の宅配便個数は40億1900万個と、40億個を突破した。09年度の31億3700万個から7年で10億個近くも増やした。

17年度は数量が増加すると想定されている。右肩上がりで上昇する宅配便個数の推移からも宅配便事業者の人手不足が深刻化している状況が推察される。
ネット通販市場は宅配=「ラストワンマイル」という大きな課題に直面している。

今後もネット通販市場が成長を続けるとすれば、ラストワンマイル問題は深刻化することはあっても、何らかの策を講じなければならないだろう。

物流業界では、大手宅配便会社をはじめとして、中堅企業でもラストワンマイルのプラットフォーム構築が始まっている。また、大手宅配便会社の協力会社である中小23社が手を組んで協同組合を立ち上げる動きもある。

物流事業者、通販事業者、消費者は、ラストワンマイルをインフラとしての位置づけ、それぞれが納得のいく配送サービスの在り方、料金の着地点を見つけてほしい。

「送料無料」の轍は踏まないでほしい。