サービスはタダではない

国土交通省が旗を振る「生産性革命」の動きが広がっている。

同省は、「人口の減少度合い以上に生産性を上げれば、経済成長を続けていくことは十分可能」(石井国土交通相)との考え方で、安倍内閣がめざすGDP600兆円の実現に寄与していく方針だ。

すでに合計13の生産性革命プロジェクトが選定され、具体化に向けて各局で施策が推進されているが、プロジェクトは多岐にわたり、同省が所管する行政の幅広さがわかる。

社会基盤の生産性を高めるプロジェクトとしては、ピンポイント渋滞対策、新たな高速道路料金体系の導入、既存港湾を活用したクルーズ船の寄港増などがあげられ、産業別の生産性向上策としては、情報通信技術による建設現場や造船業の生産性向上、トラック業務改革など物流生産性革命、ダブル連結トラックによるトラック輸送省人化などが並ぶ。

このうち、物流生産性革命では、物流事業の労働生産性を2020年までに2割程度向上させる目標を打ち出した。労働生産性とは、労働者1人が1時間当たりに生み出す付加価値額だ。付加価値額とは、経常利益、人件費、租税公課、支払利息、施設使用料の合計で、つまり、1人が1時間で人件費を含めていくら稼ぎ出すか、が問われる。

物流業のなかでも労働生産性には隔たりが小さくない。内航海運業や貨物鉄道業は全産業平均と比べても遜色ない水準にあるが、トラック事業は全産業平均の半分以下という低水準に甘んじている。

本当にトラック運送事業の生産性は低いのだろうか。サービスの質でいえば、国際的に見ても決して低いわけではなく、むしろ質の高い我が国のトラック輸送サービスを、アジアを中心とした海外へも展開しようとしているのが実態だ。

日本総研が昨年8月にまとめた、日本のサービス産業の生産性に関するレポートは、「我が国のサービス産業の生産性は過小評価されている」と指摘している。この20年、サービスの品質は向上する一方で、価格はむしろ低下している、というのだ。

同レポートは、「品質に見合った価格をどう実現するかをめざすことが重要」とし、「実質生産性の向上や品質の高さを価格に反映する環境や仕組みを整備していくことが重要」と指摘している。

現状の人手不足を「価格引き上げを起点とする賃金上昇、生産性向上の好循環」を形成するチャンスと捉え、「過小評価」されている運賃の適正化につなげたい。「サービスはタダ」ではないのだ。