サプライチェーン全体最適を
荷主企業の売上高に占める物流コストが増加している。日本ロジスティクスシステム協会(JLIS)が毎年まとめている物流コスト調査報告書によると、2018年度は4・95%(前年比0・29ポイント増)と再び増加に転じた。
深刻度を増す物流事業者の人手不足による値上げが影響しているようだ。87・9%の企業が物流事業者からの値上げ要請を受けたと回答しており、前年の71・6%に対して約16ポイント増加した。
労働人口の減少、高齢化、地域間格差など人手不足の事業環境はさらに厳しさを増す。こうした中で荷主企業も物流コスト削減にさまざまな手立てを講じている。
JLISの調査では、この1年で行った物流コスト削減策は「在庫削減」53・8%、「積載率向上」47・5%、「保管の効率化」45・7%、「ピッキングの効率化」39・0%「輸配送経路の見直し」35・9%が上位にあがっている。
平準化」は32・7%の企業が実施、前年の24・3%から増えた。
前年との比較では在庫削減や平準化といった取り組みが増加傾向にある。システム・ネットワーク関連では、拠点の見直し(増設、削減)は減少する一方で、共同化(物流拠点、輸配送)は増えている。
昨年、「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」が策定され、国もトラック運送事業者の労働環境改善に向け、荷主の理解・協力を呼びかけている。全国各地で説明会も行われ広く周知を図った。
このガイドラインには、トラック運送事業者の荷待ち時間の削減や荷役作業の効率化など、長時間労働の抑制を図るためのパイロット事業の成果を盛り込んでいる。具体的な改善事例などの情報を共有し、横展開することが期待される。
国土交通省の松本年弘物流審議官は、総合物流施策推進プログラムの成果の1つにガイドラインの策定をあげながら「サプライチェーン全体の商慣習の見直しに関係者が取り組む必要がある」と指摘する。
リードタイムの延長や発注量の平準化、システムやデータの標準化、さらに垣根を越えた共同物流の促進などを求めている。
共同物流の促進に向けても検討会が昨年立ち上がったが、荷主間連携の共同物流では「将来的にも労働者不足の危機的状況を回避するためのもの」との意見が聞かれた。
荷主側の平準化や共同物流といった取り組みも短期的なコスト対策ではなく、物流を維持しサプライチェーン全体を最適化する視点での継続性と精度向上が望まれる。