コロナ契機の施策を拡充
4-6月の景況感は改善を示した。全日本トラック協会の調査では、輸送量、収益とも堅調で指数はマイナス22・6と1-3月から18・4ポイント上昇。物流上場企業64社の4-6月期決算をみても増収増益は8割を超える。緩やかながらも回復基調にある。
全ト協調査では運賃・料金水準は一般貨物、宅配貨物、宅配以外の特積貨物いずれも1-3月より改善。輸送数量も一般、特積は改善し、宅配は悪化だが横ばいの回答が多く、実態は引き続き堅調な推移にある。とくに特積の改善幅が大きく、売上、利益も含め各項目とも指数がプラスに転じた。一般貨物も数量と売上はマイナス1ケタ台と着実に上向いている。
全体の指数マイナス22・6は2019年1-3月(マイナス18・1)に近い。しかし感染拡大前と比較した景況感はマイナス73・9に落ち込む。景況が回復してもコロナ前の水準に戻るのは難しい。
また、企業規模別にみると4-6月はいずれも改善したが大規模事業者が17・9とプラスに浮上したのに対し、中規模はマイナス20・5、小規模はマイナス42・2と開きがある。改善幅も規模が小さいほど低い。大きく落ち込んだ昨年4-6月は規模間に開きはないが、底打ち後徐々に格差がみられる。
国土交通省が全ト協を通じて月毎に公表するコロナ影響の調査をみると、2年前対比で輸送収入が減った割合は概ね減少傾向にある。だが2割超減という厳しい企業の割合は直近の7月が17%と再び増加し、昨年9月(19%)以来の悪化水準である。
企業規模の改善度合いの差異や運送品目で明暗が分かれる状況が続いていることも留意したい。
先行き一般景況は「感染拡大防止と経済活性化を見極めつつ回復傾向で推移する」(帝国データバンク)。全ト協調査では変異株の拡大や緊急事態宣言等措置による経済活動への影響を織り込み、7-9月予想は11.9ポイント悪化のマイナス34・5。それでも1-3月の指数(マイナス41・0)は上回る。
燃料高騰ほか経営を圧迫する要素も多く足元は厳しい。そうした中でも物流業界はコスト適正化、生産性向上への構造改革に、消費変化への対応と新たな施策の成果は着実に業績に表れている。必要不可欠なインフラとしての社会的認知の高まりも追い風だ。
コロナ前には戻れなくとも、コロナ危機を契機としたこれら施策の拡充が新たな成長を促す。