コスト上昇の反映は必然

国土交通省は「標準的な運賃・標準運送約款の見直しに向けた検討会」を立ち上げた。年内に方向性を示し、これを踏まえ告示手続きを経て早期に改正を行う。政府の物流政策パッケージには「標準的な運賃」、「標準運送約款」を今年中に見直すこととしており、学識者などの意見を交え3回の会合で取りまとめる。
8月30日の初会合では論点整理の要点が示された。「標準的な運賃」では現状の地域別のタリフをべースにコスト上昇を踏まえ見直すほか、政策パッケージに記載された荷待ち・荷役に係るサービス対価の示し方や、下請け発注手数料の標準的な水準などを検討する。
積載率向上の観点も議論の要点に盛り込む。「標準的な運賃」は貸切運賃を前提とするが、個建運賃のような考えができるかなど幅広い視点から検討する方向だ。
約款においても荷待ち・荷役サービスに係わる措置として契約の書面化、電子化の検討などが要点となる。2017年の約款改正で運送の対価である「運賃」と運送以外の役務等の対価である「料金」を適正に収受できる措置を講じたが、さらに明確化するよう環境を整備する。
「標準的な運賃」は20年4月の告示から3年を経過、今年度末までの時限措置が当分の間延長され、その有用性が確認される。しかし届出率は6割弱と依然〝道半ば〟だ。今回の見直しで荷待ち・荷役や下請け発注手数料、積載率向上の観点からも検討し、より使いやすい制度となり活用が広がるよう期待したい。
国交省が今春行った標準的な運賃に係わる実態調査では、運賃交渉が進む中でも「希望額を収受できた」との回答は30%、「一部収受できた」は33%。コスト上昇環境は荷主側も同じであり、現状の交渉実態を踏まえた視点も必要だ。
それでもコスト上昇分を反映したタリフの見直しは必然である。政策パッケージに対応し早期に改正を行うが、情勢変化は目まぐるしく今後も状況をみながら必要に応じた見直しも望まれる。
政策パッケージには162人体制で始動した「トラックGメン」が「標準的な運賃」の活用状況について監視を強化し、適正取引を阻害する疑いがある荷主企業等には貨物法の「働きかけ」、「要請」を行うことで実効性を確保するとしている。
「標準的な運賃」制度だけでなく、政策パッケージなど各施策が連動していることをしっかり認識し、適正運賃・料金収受へ交渉に臨みたい。