ガイドラインの普及を図れ

トラック運転者の長時間労働の改善などを議論するトラック輸送の取引環境・労働時間改善中央協議会が、トラック運送事業者が荷主と協力して改善に取り組むガイドライン(指針)の案をまとめた。

協議会は2016年度から2カ年にわたり、47都道府県で運送事業者と荷主、行政が協力してトラックドライバーの労働時間短縮を目指すパイロット事業を実施してきた。ガイドラインは、その成果として長時間労働の削減などに効果が高いと評価された13の好事例でまとめた。

ガイドラインは、事例集を参考にしながら、より具体的に、それぞれの現場に即した形で、荷主とともに取引環境と長時間労働の改善に向けた取り組みが進められるような構成になっているという。

例えば、荷主企業にとっては何気ないことが、ドライバーの労働時間に大きな影響を与えて場合がある。これは裏を返すと、ほんの少しの作業改善であっても、ドライバーの労働時間を大きく改善できる可能性があるということになる。

中央協議会では、ほんの少しの作業改善がサプライチェーン全体の効率最適化につながるとも期待している。

ガイドラインは、荷主企業と運送事業者がともに取引環境と長時間労働の改善に向け、取り組むための進め方を示したものだ。

一方で、中央改善協議会が設置されてからも、トラック運送事業の長時間労働は依然として改善されていないのが実情だ。

23年4月からは、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が引上げられる。24年4月からは自動車運転業務に罰則付きの時間外労働の上限規制(960時間)が適用される。これらの対応へ、普及の取り組みが急がれる。ガイドラインが実効性あるものになるためには、拘束時間削減へ向けて普及することがカギを握る。

トラック輸送の取引環境・長時間労働改善に向けた諸事業のロードマップは、5年後の23年度まで示されている。正念場は、運転者への時間外労働の上限規制が適用される24年度からであろう。継続していけるかどうか、パートナーシップの真贋が試される。

昨年7月から新たな荷主勧告制度の運用が始まるなど、トラック運転者の労働時間の短縮は、荷主企業自身のコンプライアンスにとっても重要なポイントとなっている。

荷主とトラック運送事業者による改善への取り組みが、より自主的・積極的に行われることを期待したい。