ウイズコロナの流通変化に注視
物流企業の決算や景況感の指数などからは概ね当初予想を上回る数値が出ているようだ。変異ウイルスの感染拡大、緊急事態宣言による経済活動の影響と予断を許さない状況が続くが、ウイズコロナにおいて現況をしっかり見極めながら、より迅速な経営判断が求められる。
主要物流企業の3月期決算が出揃ったが、大手の業績予想をみると引き続き生産性向上、コスト調整機能の強化を進め増益を確保する。前年のコロナ影響の反動増も含め売上も増収見込みが多い。直近1-3月の数字が軒並み良いが、フォワーダーは海外市場の回復や需給逼迫による運賃上昇、国内物流ではEC拡大による宅配や日用品関連の荷動きが想定を上回る。
全日本トラック協会の景況感調査では、1-3月期の判断指数がマイナス41・0と、10-12月期から24・3ポイント上向いた。6・3ポイント悪化の前回予想から改善に転じた。宅配貨物の堅調さが続きながら、一般貨物、宅配以外の特積貨物も輸送量が回復基調にある。4-6月期は現況を織り込み1・0ポイント悪化と1-3月期のほぼ横ばいとみている。
全ト協の景況感調査は前年同期と比べ景況の好転・悪化を判断するもの。前年4-6月期(マイナス112・5)は既にコロナ禍の状況で、これに対しマイナス判断は確かに厳しい状況ではあるが、指数はこの前年4-6月期を底に着実に上向きの傾向にある。
宅配貨物は引き続き物量増大が見込まれる。全ト協調査の4-6月期予想でも103・3。1-3月期(116・7)より下がるが100超の数値を示している。
ヤマト運輸の4月の宅配便取扱個数は前年同月比10・4%増と2ケタ増を維持した。前年4月も巣ごもり需要を取り込み拡大(13・2%)したが、さらにEC市場の活況さを反映した。コロナを契機にEC需要のすそ野が一気に広がっていることを示す。同社はこの傾向から今年度通年でも2ケタ近い増加を想定して体制を組む。
帝国データバンク(TDB)によると、国内景気は下振れリスクを抱えながらも、ワクチン接種が進むことで経済活動が正常化し緩やかに上向くとみる。その中で「自宅内消費の拡大など新規需要の創出」がプラス材料とする一方、「企業業績の業種間格差の拡大」も指摘する。
緊急事態宣言の延長でとりわけ個人向けサービス関連の悪化が続く。流通形態の変化やこうした景況感の二極化傾向も注視する必要がある。