アフターコロナを見据える

全日本トラック協会の坂本克己会長は3期目にあたって「適正化のブレーキと活性化のアクセルにより社会・経済をしっかり担う組織を作りあげる」との意向を述べた。
現下はコロナ感染症の影響が長期化し、荷主の業績が厳しい中でも、「標準的な運賃」の届出促進、交渉を粘り強く進めている段階である。
同時にワクチン接種が進んで感染拡大が収まり、荷主の業績回復を見据えると、エッセンシャルワーカーとして再評価されたトラック運送業がしっかりと経済・社会を支える必要がある。地域の経済とくらしを支えるという存在感を確かなものにするにも、適正化と活性化の2つのキーワードは大事だ。
坂本会長が述べた適正化のブレーキは、「公正公平なる正しい競争のもとに正直ものがばかを見ないこと」。改正事業法による「規制の適正化」、「事業者が遵守すべき事項の明確化」の確実な実行である。
厳しい環境下もアフターコロナを展望し、真面目な事業者が前向きに新たな戦略を描けるような環境づくりが求められる。
コロナ収束を見据えた活性化には国の成長戦略に示されるカーボンニュートラルの対応やDX(デジタルトランスフォーメーション)など様ざまな要素がある。
国は商用車の電動化へ高い数値目標を掲げており、坂本会長もEV(電気自動車)やFCV(燃料電地車)など「国とともに新しい技術開発を進める組織をつくる」としている。専門の委員会を発足する予定で次代の変化に対応する。
小規模事業者が大半を占めるトラック運送業界。活性化のアクセルを勢いよく踏み込めるだけの体力、強い経営基盤がなくてはならない。
全ト協は4月に小規模事業者コロナ時・災害時特別対策委員会が課題や支援策など「答申」を取りまとめている。ここで示した、IT機器の活用による業務改善や、協同組合加入による共同化・効率化、適正な運賃の収受(標準的な運賃の届出促進)、融資制度の周知・活用といった重点策の実行が活性化を強く後押しする。
IT活用では国がロボット点呼の制度化へ今年度実証実験を進めている。共同化も高速道路料金割引の拡充・恒久化など働き掛けを行っている。
これらを背景に小規模事業者が健全な事業継続、発展へ自らの仕事に誇りと自信を持ち、アフターコロナの経済、社会の成長に大きく貢献する新たな一歩に期待したい。