なぜ荷主の理解・協力が必要か

国土交通省の奥田哲也自動車局長は24日の定例会見で、改正トラック事業法の政省令などの制定・施行の見通しについて「基本は公布(2018年12月14日)から1年6カ月、標準的運賃告示制度は2年以内の施行だが、業界関係者と調整しながらできるだけ早期に行いたい」との考えを示した。

改正事業法は、過当競争から公正競争への新たなルールによる競争環境の整備と、トラック運送事業の働き方改革を後押しすることを目的としており、なかでも「標準的運賃の告示制度」と「荷主対策の深度化」が肝といわれている。

とくに「標準的運賃の告示」については、期待が大きい。トラックドライバーはじめトラック運送業界で働く労働者が法令遵守し、世間並の労働時間と賃金水準などの労働条件を確保するためのコスト――、これを吸収するには「どのくらいの運賃なら持続可能かを国が判断することになる」からだ。

業界団体の新年賀詞交歓会では、改正事業法に対する期待の声が聞かれた。「業界、事業者がなすべきことを示している」「業界を取り巻く環境の変化を感じる」「業界の社会的地位向上につなげたい」「気持ちを新たに課題に取り組みたい」など、いずれも前向きだ。

全ト協の賀詞交歓会では、坂本克己会長が「仕事に励むドライバーが、自信と誇りを持てるような労働環境にしなければならない。事業法改正はスピードをもって思惑通りに成立した。働き方改革を後押しする仏を作った。後はご利益があるよう魂を入れることが大事だ」とあいさつし、改正事業法の施行に向けて「行政と全国の事業者、(労働)組合が三位一体となり、いかなる荷主にも理解、協力してもらうこと」を呼びかけた。

改正事業法は、トラック事業者の努力だけでは働き方改革・法令遵守を進めることは困難として、荷主にトラック事業者が法令遵守できるよう「配慮義務の新設」、「荷主勧告制度の強化」「国土交通大臣による荷主への働きかけ規定の新設」を図っている。荷主の理解・協力のもとで、働き方改革・法令遵守を進める取り組みが、改正の趣旨である。

中央と地方で行われている、荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善は、今年で5年目に突入する。国交省は昨年11月に策定したガイドラインの周知を目的に2月、荷主と事業者を対象にセミナーを行う。

労働力不足時代に物流を維持、効率化させるには、荷主の理解と協力が必要だ。