〝止めない物流〟へDX推進

各省庁からの来年度予算概算要求では、別枠要求できる新型コロナウイルス対策費を中心に現時点で金額を示さない「事項要求」も相次いだ。コロナ便乗とも揶揄されるが、激甚化・頻発化する自然災害への対応も含め、危機時に備えた体制強化への施策に万全を期すことが求められる。
国土交通省の概算要求では「国民の安全・安心の確保」、「持続的な経済成長の実現」、「豊かで暮らしやすい地域の形成と多核連携型の国づくり」の3点に重点を置いた。これらの基本的考えは各省庁とも共通するところだろう。ライフラインの重要インフラである物流の各施策も縦割りを超えたより強固な連携が不可欠だ。
自動車局関係では危機時もその機能を維持するため、生産性向上への取り組みを加速化し、トラック運送関係では強靭化や輸送力強化への調査事業を新たに加えた。公共交通・物流政策関係では、コロナ禍による新たなニーズ対応や、防災・減災においての柔軟かつ強靭な物流ネットワーク構築への施策が目につく。
持続可能な物流の構築には、平時からの備えと同時にさらなる生産性向上が急務だ。概算要求の方針にはAI、IоTなど技術革新の動きを取り込むデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が随所に盛り込まれる。物流もDXが大きなキーワードとなってきたが、個々の事業者にとっては多額な投資負担の印象もある。行政の確実な支援措置により業界全体でその機運を高めていきたい。
物流業界はコロナ禍によるライフスタイルの変化やニーズ対応の側面からも、逼迫する宅配の物量増大や、非接触・非対面への試行と様ざまな対策に追われる。
こうした中で今般、物流総合効率化法(物効法)の枠組みにおいて、省人化・自動化機器導入による支援の拡充や、非接触・非対面型物流モデル創出に向けたBtоB、BtоCの実証事業が概算要求に盛り込まれたことは意義深い。
さらに倉庫関係では今年度予算で実施の自立型ゼロエネルギー倉庫モデルの導入支援の継続や、コロナの影響による物量増に対し既存の倉庫シェアリングも含めた「物流施設の有効活用の推進」に向けた調査・検討も新規に計上しており、有効な施策を見出したい。
こうした新たなニーズ対応の取り組みも物流の効率化に繋がる。労働力不足に直面する中で、コロナ対策は生産性向上、DX推進の契機ともとらえたい。