〝取引事業者全体〟の意識を
「パートナーシップ構築宣言」の登録企業数が1万50000社を数える。国は2020年7月に大企業と小規模事業者の実質的なパートナーシップ構築を目指す同宣言を立ち上げたが、その後もコロナ感染症の影響の長期化に、DX、GXの加速化、燃料高騰による価格転嫁など企業間の連携や取引環境も大きく変化、その取り組みが一段とクローズアップされる。
当初は感染拡大で大手企業のキャンセルや値引きなど優越的地位の乱用防止の印象も強かったが、宣言の主眼は①サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列を越えた新たな連携、②親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行の遵守である。各社取り組みがサイトに掲載され、登録数の増加で〝見える化〟が多業種に広がることが期待される。
登録企業数(14日現在)1万5033社のうち、19業種別では「製造業」が5741社と4割弱、次いで「サービス業(他に分類されない)」1377社、「建設業」1331社、「医療、福祉」1211社が1000社超。「運輸業、郵便業」は9番手の358社。小規模事業者が多いがこの3カ月では倍増で伸長する。
政府は事業者団体や未宣言の大企業に改めて働きかけを行ったほか、7月には下請振興法に基づき下請取引の望ましい在り方を示す「振興基準」を改正、同宣言を行うことを親事業者の努力義務にした。経済産業省は中小企業による価格転嫁の円滑化、サプライチェーン全体の付加価値向上の観点から、 取引先を多く抱える大企業で幅広く宣言することが重要とし、政策的インセンティブを拡充させている。
登録企業の下請企業への調査によると、働き方改革の取組支援やデータの相互利用、グリーン化支援など要望が多いこと、また、約85%が全ての下請企業の価格協議に応じ、約半数が4~6割程度の転嫁を受け入れているなどその成果、実効性も確認されている。
そうした中でも足元ではさらなる転嫁対策が急務だ。帝国データバンクによると、上半期(4~9月)の「物価高倒産」は過去最多だった前年同期の倍以上。運輸業が最多で前年比5倍超だ。取引先からの値下げ圧力など価格転嫁できず、とりわけ小規模事業者では体力がもたない。
持続的成長には取引先とのパートナーシップをしっかりと構築し、取引事業者全体で企業価値を最大化する必要がある。パートナーシップ構築宣言による共存共栄の意義を再認識したい。