「潮目が変わる」年に

適正運賃収受への取り組みが進んでいるようだ。トラック関係団体の新年賀詞交換会で、1990年(平成2年)の規制緩和以降、過当競争によるアゲンストの風の中で奮闘してきた中小事業者から「そよ風が吹いている」「経営環境は、顧客との運賃交渉で解決しなければならない」との声が聞かれる。

「宅配危機」が大きく報道され、物流業界の現状が社会から認識されたこと、標準貨物自動車運送約款の改正などフォローの風により、今年は「潮目が変わる」年と位置づける事業者は少なくない。

全国中小企業団体中央会(全国中央会)の12月調査によると、トラック運送事業など運輸業の売上高DIが前月比9・4ポイント増のプラス20・6と大きく上昇し、適正運賃収受への取り組みを裏付けた。

ただ、迎えた2018年を取り巻く経営環境は、深刻な人手不足、長時間労働改善をはじめとする働き方改革、燃料の高騰など厳しい課題が山積している。

こうした現状について、中小トラック事業者は「ドライバー不足による車両減少と労働規制で荷物が捌ききれない。運賃は改善されているが、燃料価格の上昇と下請代金の上昇により、収益状況は低迷したままだ」と指摘する。

全国中央会によると、運輸業の12月の景況DIはマイナス7・6、収益DIがマイナス11・1と、ともに大きく上昇したが、売上高レベルの改善に至っていない。

売上高DIの上昇に水を差すわけではないが、12月は目前に積み上がった受注量や取扱高によって、人件費・外注費・燃料費などコストの上昇による慢性的な利益率の低下傾向が一時的に補完ないし隠伏されている側面は否定できない。
あるトラック関係団体の新年会で主催者を代表してあいさつしたトップは「政府は生産性向上、働き方改革を推進しているが、我々は長時間労働に頼らざるを得ない状況だ。これを打破するためには積極的な運賃交渉を行い、ドライバーの他産業並み賃金をはじめとした、労働条件の改善が重要」との考えを示したが、これは業界内外でも共通認識だ。

トラック運送事業の一丁目一番地である安全への取り組みは、企業が安定した再生産ができることが前提となる。社会的な使命である輸送の安心・安全を確保し、諸問題解決のためにも、適正運賃収受が必要だ。

行政も後押しし、フォローの風が吹いている今、運賃交渉に取り組んでもらいたい。それぞれの立場で知恵を出し合い、企業と業界が健全に発展するよう期待したい。