「働き方改革」を見守りたい
ヤマト運輸は、社員がイキイキと働ける職場を作り直し、社員の満足を高めていくことを最優先事項とする――同社は「働き方改革」の基本骨子を取締役会で機関決定した。
基本骨子には、①「労務管理の改善と徹底」②「ワークライフバランスの推進」③「サービスレベルの変更」④「宅急便総量のコントロール」⑤「基本運賃を27年ぶりに値上げ」の5つの改革の実行に加え、現場からの改善提案にも積極的に対応していくことを明記した。
宅急便総量のコントロールでは、大口の顧客、低単価の顧客に対して貨物量の抑制を要請し、上期中を目標に顧客と交渉する。27年ぶりとなる基本運賃の値上げについては、社員への処遇充実や新戦力の採用、再配達を削減するためのIT基盤やスピーディーなオープン型宅配ロッカーの設置拡大などに投資するためと説明している。
同社は、eコマース市場の急拡大を受けて低単価の荷物が急増し、宅急便の総量や運賃をコントロールすることが不十分だった経営の責任、社員が休憩の未取得を申告できない労働環境に対する対応の不十分さも率直に認め、2017年度の最優先経営課題として「働き方改革」に取り組むことを宣言した。
ヤマト運輸の宅急便を含む宅配便事業は、社会インフラとして認知されている。同社は、顧客の満足を高めるための便利さを提供し、これからも維持していくことが期待されている。社会の満足度を高めるためには、宅急便だけでなく、パートナー企業や業界の環境を改善していくことも明らかにしている。
同社が今年2月から宅急便センターのセールスドライバーを中心とする社員の労働時間実態を調査したところ、多くの社員が休憩の未取得を申告できていないなどの問題が浮き彫りになった。
ヤマト運輸の「働き方改革」は、労働環境の改善、整備はもちろんのこと、デリバリー事業全体の事業モデルをこれからの時代にあわせて設計し直し、改革していくことだと位置付けている。
このため、労務管理の改善、ワークライフバランスを推進するだけではなく、配達時間帯の見直し、宅急便総量の抑制、基本運賃の改定まで行うことにしたのだ。
これらの改革をスピーディーかつ総合的に推進するため、本社、全支社、全主管支店に「働き方改革委員会」を設置し、現場からの改善提案にも積極的に対応していくという。
宅配サービスを持続的に発展させるためにヤマト運輸が取り組む「働き方改革」を見守りたい。