誰もが働きやすい職業に

厚生労働省が初の「過労死等防止対策白書」を公表した。

白書によると、脳・心臓疾患による労災の支給決定件数は、2002年度に300件を超えて以降、200件台後半~300件台で推移している。精神障害による労災支給決定件数は、2012年度以降400件台で推移している。

2015年度の脳・心臓疾患による労災支給決定件数は251件で、道路貨物運送業はこのうち82件を占め、ワースト1だ。職種別で見ると、自動車運転従事者が87件を占め、これも最多だ。

白書は、個別産業であるトラック運送業について言及し、年間総実労働時間が2443時間と全産業の中で最も長く、平均の2026時間を大きく上回っている点を指摘。さらに、1ヵ月の所定内実労働時間数および超過実労働時間数の合計は、営業用大型貨物自動車運転者で218時間、営業用普通・小型貨物自動車運転者では215時間となっており、平均の177時間を大きく上回っていること、週労働時間が60時間以上の雇用者の割合が、平均の11.6%に対し、自動車運転者では35.3%となっていることなど、各種の調査でトラック運転者の長時間労働の実態が明らかになっていることを指摘している。

労災支給決定件数については、脳・心臓疾患によるもの計251件のうち79件が、精神障害の全支給決定件数472件のうち27件がトラック運転者に対するものであることを明らかにし、すべての労働者のなかでトラック運転者が大きな比率を占めていることを問題視した。

白書は、「トラック運転者の長時間労働の実態は深刻であり、その改善は急務であるが、トラック運送事業者側のみの努力でこれを解決することは困難」とし、発注者との取引関係のあり方も含めて改善を図っていくことが不可欠だとしている。

改善のための枠組みとして、昨年5月に厚労、国交両省が設置したのが取引環境・労働時間改善協議会だ。学識経験者、荷主、トラック運送事業者、経済団体、労働者団体、行政が一堂に会して、トラック運送業界の労働環境改善に取り組んでいる。

このほかにも、首相官邸主導による「下請等中小企業の取引条件改善に関する関係府省等連絡会議」「働き方改革実現会議」などでも、トラック運送業の取引環境の改善や長時間労働の是正が課題として取り上げられているが、いずれの会議もめざすところは同じだ。トラック運送業を誰もが働きやすい職場、職業へと変えていくことが求められている。