物流現場の実態広く共有

農林水産省が12日に行った農林水産品・食品の物流に関する官民合同タスクフォースでは、メンバーの関係各団体が物流改善への進捗状況を述べ、現状を共有した。物流効率化の動きが見られる一方、現場の労働環境改善へ課題は多い。産地からメーカー、卸、小売り、物流事業者と業種横断的な取り組みが求められる。
農水省は2023年12月に物流対策本部を設置。関係団体が参画したタスクフォースの開催や、メンバーが現地に入った具体的な改善策の実施、意見交換、必要な情報発信を行っている。法改正などの施策もあり、2024年問題について現状のところ物流の機能は維持できているが、各調査からは農林水産品・食品分野は依然として多くの物流課題を抱える。
年度末の輸送能力不足に関する実態調査では、今年1月の輸送状況について、農業分野の荷主で輸送能力不足を実感した場面が「かなりあった」、「度々あった」との回答は約4割と全産業で最も多い。「輸送を断られたことがあった」との回答も最多だ。
青果物を扱うトラックドライバーへのアンケートでは、産地での積込待機・作業時間、卸売市場での待機・作業時間は24年実績で22年比いずれも「1時間以内」が増加している。パレット積みの割合はほぼ変わらないとの結果である。
さらにトラック運送事業者への調査では、貨物法による違反原因行為(長時間の荷待ち、運賃・料金の不当な据え置き、契約にない附帯業務)は減少傾向だが、輸送物品では食品分野の割合が最も多い。
12日の会合では全日本トラック協会の馬渡雅敏副会長が、高速道路料金の負担、標準的な運賃・燃料サーチャージ、パレット化、納品日時の分散・リードタイム延長を要望した。また、飼料輸送ではドライバーが飼料タンクの高所作業を行っており、タンクの一斉点検など労働環境の改善を求めた。
タンク据え付けの梯子は簡易で不安定な構造から老朽化も懸念される。安全面とともに附帯作業としての商慣習是正も求められる。
タスクフォースは今後も年1回開催を予定する。農水省事務局は「関係者の多い物流現場では短期で劇的な成果は見えにくく、長期的な視点を忘れず取り組みを着実に進めたい」とコメントしている。各業界では先行事例も多く見られており、さらに物流現場の実態を広く共有し、改善のスピードを加速させたい。