値上げ要請へさらなる理解
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が公表した2025年度物流コスト調査報告書の速報値では、荷主企業の売上高物流コスト比率は5・36%となった。2年連続回答企業の比較では、前年度比0・03ポイント増の5・75%と微増。販売単価が高い伸びを示すが、物流単価の伸びが上回り、売上高物流コスト比率の上昇につながった。
JILSでは、「物流事業者からの値上げ要請などを背景に、長期的な上昇傾向が続いている」と見ている。上昇の背景には2024年問題に伴う人件費の増加が大きいが、インフレによる諸経費の高騰や法令遵守への対応コストなども含め、複合的な影響が聞かれる。
同調査では、物流コスト値上げ要因として具体的な記述があった75 社を分析している。
最も多いのは「人件費の高騰」で約4分の3の55 社が言及している。
次いで、40 社がインフレや市況変動による諸経費の高騰を挙げる。輸送費では「燃料費高騰」の対応とともに、「燃油サーチャージ導入」の動きも見られる。保管費では「光熱費高騰」が倉庫運営コストを押し上げる。
ほか「車両購入費、維持費、修繕費の高騰」、「トラックリース料の増加」など車両関連コストの増加が目立つほか、「原材料・資材費の高騰」による包装費の値上げも見られた。さらに、「地価高騰」「周辺相場価格の高騰」「坪単価上昇」が保管費に影響している。
2024年問題が直接的な理由との回答も一定数(15社)ある。改正物流法で定められる「荷待ち・荷役等時間の短縮」、「積載効率の向上」への対策や、コンプライアンスの強化、法令遵守など関連政策への対応に伴うコスト増が運賃に転嫁されているとの回答も確認される。
さらに物流の持続可能性を考慮し、値上げ要請を受け入れる回答(15社)もみられた。
指数分析では、今回の24年度対象が、販売単価(+33)、物流単価(+40)とも大幅増に対し、25 年度(見通し)は、販売単価(+14)は鈍化するが、物流単価は引き続き高い伸び(+37)を見込んでいる。
トラック運送業界は荷主優位の取引構造により他産業と比較してコスト上昇分の価格転嫁が進まない。今回の荷主調査からは人件費はもとより、2024年問題への対応も含めたあらゆるコスト上昇を荷主側も認識しており、実態を踏まえしっかりと交渉への理解を深めたい。
