格差是正へさらなる転嫁を
3月に行われた「価格交渉促進月間」のフォローアップ調査結果をこのほど中小企業庁が公表した。トラック運送業は価格交渉、価格転嫁ともに改善したが、全業種の中では依然として低い位置にある。
中企庁は毎年3月、9月の価格交渉促進月間において、受注企業が発注企業にどの程度、価格交渉、価格転嫁できたかを把握する調査を行っている。受注企業へのアンケートから発注企業(今回は延べ7万6894社)の状況を数値化している。
トラック運送業の発注企業の価格転嫁率は前回の9月調査より6・6ポイント増加し、36・1%。それでも全体の転嫁率52・4%とは開きがあり、全30業種中で最も低い。
同調査で価格転嫁率の業種別ランキングを公表した22年9月時点では、全体の転嫁率は46・9%、トラック運送業は27業種中最下位の20・6%だった。着実に改善傾向にあるが、今回のトラックの36・1%は、22年9月の全体水準と比べてもまだ10ポイント以上の開きがある。
一方で今回の調査で価格転嫁率が5ポイント以上増えたのはトラック運送業含む8業種。減少も7業種ある。取引環境是正へ国の施策が進展する中で、トラックの転嫁率は大きな伸びしろがあると捉えたい。
トラックのように多重構造の業界ほど転嫁率が低いことも今回の調査で明らかになった。全業種で1次請けの企業は転嫁率が5割超に対し、4次請け以上の企業は4割程度で、「全く転嫁できない」、「減額」企業も3割近い。より深い段階への価格転嫁の浸透が課題であるのはトラックに限ったことではない。
トラック運送業における多重下請構造検討会の取りまとめ案には、利用運送の適正化を含め、川上を起点とする取引環境の規律ある形成など施策の方向を示している。成立した適正化2法でも、多重構造を是正する施策が盛り込まれる。改正下請法により発注企業の荷主とのさらなる交渉促進も求められる。
帝国データバンクの6月の景気動向調査によると、運輸・倉庫業で運賃などを示す販売価格DIは3カ月連続減少と足踏み状態。国の激変緩和措置などもあり、仕入単価DIも下げているが、「コスト上昇分に運賃相場が追い付かない」状況が続いている。
トラックの価格転嫁率の低さは他産業との賃金格差とも重なる。国の施策で実運送が適正運賃・料金を収受できる環境は着実に進展しており、これら措置をしっかりと理解し実のあるものにしたい。