カスハラ不安払拭する環境
全日本トラック協会は、昨年12月に坂本克己会長の諮問機関として設置した、「ドライバーの社会的評価の向上に係る検討委員会」において、事業者がドライバーをカスタマーハラスメント(カスハラ)から守るための取り組みや、社会的評価の向上に係る取り組みを検討、さきごろ提言を取りまとめた。
カスハラは顧客や企業が従業員に対して行う不当な要求や迷惑行為。法律上の定義はないが、厚生労働省が2022年2月に「対策企業マニュアル」を作成し、企業の担当者をはじめ幅広い活用を促す。カスハラ対策指針を公表する企業・団体も多くみられる。
一方で、トラック運送業界は小規模事業者が多数を占め、実際の現場でどのようなカスハラ行為がおきているか詳細を把握し、個別の事業者がどう対策を講じるか、業界として明確な方向性を示す必要があった。
同検討委員会では、宅配や引越など一般消費者を対象とした場面だけでなく、企業間輸送における現場でもカスハラの事例は多く聞かれたという。
全ト協では年度内にもカスハラに係るトラック運送業界独自の指針を作成するともに、荷主・物流事業者に広く浸透するよう、リーフレットやポスター、研修ビデオなどを作成する考えだ。
提言には事業者がやるべきことに、「カスハラをなくす方針を明確にし、トップ自ら内外に発信」、「運送契約時にハラスメント防止条項を盛り込む」、「相談対応者や窓口を設置」などが有効とする。実際に起こった際は、「事実関係の正確な確認」や「ドライバーの精神面への配慮」、「注意喚起等による接客態度の改善を通じた再発防止」を求めている。
荷主への周知も重要だが、まず、カスハラに悩む従業員にしっかりと寄り添う職場環境に重きを置く。事業者が責任を持って大切なドライバーを守り、不安、心配事を抱えることのない風通しの良い職場にする。これは人が集まりやすい業界にもつながることだ。
もう1つのドライバーの社会的評価の向上では、「仕事に取り組む姿勢や仕事の質など、売上高以外の指標で評価する賃金体系基準の構築」を求めている。接客プロセスの質を上げることはカスハラの防止にもつながるものだ。
先般成立したトラック適正化2法の施行とともに、同提言内容が具体化されることで、業界全体の地位向上はより確実なものになる。