適正運賃収受に期待

物流業界の人手不足と高齢化、この問題は日本経済に重くのしかかっている。とくに、トラック運送業界はドライバー不足が社会的な課題となっており、なかでも中長距離のドライバー不足は深刻な状況となっている。

長時間労働や附帯業務などの負担の大きい業務内容、規制や安全コストを賄えない不適正な運賃による賃金の低下などにより、若年層を取り込めていないことが原因としてあげられる。

トラック運送業界では、ここ数年ドライバー不足が慢性化しており、人材需給ギャップは5年後に10万人との試算もある。物流業界はもちろん、産業界も危機感をもっている。

こうした中で、国内の大手食品メーカー6社は昨年2月、中長距離の幹線輸送再構築で合意し、持続可能な物流体制の実現に向けて検討を重ねきた。その一環として、この3月から味の素とミツカンの2社が共同で関東~関西間の鉄道往復輸送を開始し、ドライバー不足に対応する。

物流業界でも通運事業者団体の全国通運連盟が、鉄道コンテナ輸送へのモーダルシフトの推進・定着をかかげている。10日、都内で行われた第11回鉄道利用運送推進全国大会では、鉄道貨物輸送をモーダルシフトの担い手としてアピールした。

JR貨物の1月輸送実績は、コンテナ輸送が前年比4.5%減と、11品目のうち8品目が前年割れした。足元の輸送量は踊り場にきているものの、トラックから鉄道へのシフトが進んでいる「積合せ貨物」は約7%の伸びで、モーダルシフトの流れを強く感じさせる。

トラック運送業界などからあがる「労働力不足」の悲鳴に、国はサービス業5分野(トラック運送業、飲食業、小売業、宿泊業、介護)の生産性向上へ補正予算12億円を計上し、このうち3.3億円がトラック運送業向けに振り向けられる。

国土交通省では、荷主業界ごとに異なる商慣習や商慣行、物流の課題を調査し、改善に向けたモデル事例の創出も検討する。また、共同配送や貨物と車両のマッチングなどの共同化事例を調査し、ガイドライン化して水平展開したい考えだ。

いま、トラック運送をめぐる情勢は、理解を得られやすいフォローの風だ。19日の取引環境・労働時間改善中央協議会では、適正運賃収受が主要議題の1つに据えられた。

トラック輸送の確保に、荷主も危機感を抱いている。ドライバーの労働条件を改善するため、適正運賃収受に向けた関係者の取り組みに期待したい。