生産性向上と人材確保

国土交通省が、ダブル連結トラックの走行実験を行うという。特殊車両通行許可の車両長制限を現行の21mから25mに緩和し、より沢山の貨物を1度に運べるようにする規制緩和だ。運転者1人で大型トラック2台分の貨物を輸送でき、物流の省人化に貢献できると期待される。

ドライバーの長時間労働改善に向けて、中間地点で上下線のドライバーが交代する中継輸送の実験も併せて行うという。静岡県内のサービスエリアなどを利用して、ドライバーを交代すれば、500kmの運行が半分で済み、その日のうちに自宅に帰れる。

フルトレーラの長さ規制は、2013年に19mから21mに緩和され、いち早く大型化に取り組んだ日本梱包運輸倉庫では、埼玉県狭山~三重県鈴鹿間の輸送で、中間地点である静岡県焼津の営業所を乗り継ぎ拠点として中継輸送を実施している。

大型車2台分の荷物をフルトレーラ1台に集約することで輸送効率を向上させたほか、ドライバーの改善基準遵守のため、車両の相互乗り換えを実施したものだ。

トヨタ自動車の完成車輸送会社であるトヨタ輸送でも、21mへの緩和でそれまでの6台積みから8台積みが可能となり、輸送効率が33%向上した。これらの物流企業は、さらなる緩和や特大車の高速道路料金引き下げを求めていた。

車両長をさらに25mへと緩和する走行実験の概要が報告された1日の社会資本整備審議会物流小委員会では、委員からは追い越し時の安全性やドライバーの疲労度、事故の発生などを心配する意見が出された。

全長25mのフルトレーラ実現は、国土交通省の生産性革命プロジェクトの1つでもある。労働生産性が全産業平均の半分以下であるトラック輸送の生産性向上は急務だ。

労働力不足対策の観点からは、1人のドライバーでより多くの貨物を運べるようにする物流の省人化、効率化は大きなテーマだ。

ただ一方で、優秀な人材を確保するという視点も忘れてはなるまい。物流業、トラック運送業を若者や女性にとっても魅力ある業種とする努力を惜しんではならない。

厚生労働省によると、2016年3月卒業の高校生の就職内定率は99.1%で、1991年3月卒業者以来25年ぶりの高水準だという。大卒等の就職率も0.8ポイント増の97.5%と高水準だ。

売り手市場の若者を獲得するためには、魅力ある労働条件を示す必要がある。そして、その労働条件を提示できるかどうかは、経営者の手腕にかかっている。