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日本流通新聞3月9日付紙面から

社説:労働条件改善のチャンス

 厚生労働、国土交通両省が来年度から、トラック運送事業の長時間労働改善に乗り出す。
 厚労省は、今国会に提出する労働基準法改正案に、月60時間を超える残業に対する割増賃金率50%を中小企業にも適用することを盛り込むが、現在の長時間労働が改善されないまま、即時に割増賃金率の増加が適用されると事業者の負担増となるため、来年4月の法施行後3年間は中小企業全体への適用を猶予し、その間に長時間労働の抑制を実現するための具体的な環境整備を図ることにしたものだ。
 とくにトラック運送事業は、総労働時間が長く、60時間以上の長時間労働も常態化しているため、ドライバーの負担も大きく、過労死件数が業種別で最も多い状況にある。年間総労働時間は、全産業平均の2124時間に対し、大型トラック運転者で2640時間、中小型運転者でも2592時間と500時間前後の開きがある。
 一方で、荷主の都合による手待ち時間など長時間労働の実態があり、トラック運送事業者のみの努力で改善することは困難なため、国全体として労働時間短縮に向けた諸対策を推進することなった。
 厚労省がまとめたロードマップ案によると、行政、荷主、事業者などで構成する「長時間労働改善対策協議会」(仮称)を設置し、実態調査の実施、阻害要因の整理、パイロット事業の計画・検証、ガイドラインの策定、長時間労働改善対策の検討などを行う。4年間かけてこれらの取り組みを進めることにより、割増賃金率増加が適用される2019年4月までに、長時間労働を抑制するとともに、その後の定着をめざす。
 直ちに準備に着手し、来年度早々にも協議会を設置して、まず長時間労働の実態調査を行う。荷待ち時間などの詳細を把握することが目的で、調査結果を分析して課題を整理し、対策を検討する。
 2016年度からは、長時間労働を削減するためのパイロット事業を全国で100件程度行い、長時間労働を改善するための諸対策を実行に移す。
 さらに、2017年度に長時間労働改善ガイドラインをまとめ、荷待ち時間を確実に削減し、長時間労働の改善に資する仕組みを盛り込む。
 劣悪な労働条件を背景に、ドライバー不足感はますます強まる一方だ。このままでは物流サービスが崩壊しかねない。割増賃金率適用がトリガーではあるが、人手不足を解消するためにも、トラック運送事業の労働条件を改善するチャンスだ。行政、荷主、事業者の真摯な取り組みに期待したい。

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