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日本流通新聞5月12日付紙面から

社説:運転免許に緩和あり得ず

 警察庁が中型免許見直しで3つの具体案を提示した。
 1つ目のA案は、トラック運送業界の要望に近い普通免許拡大案だが、同庁の評価は「普通免許の対象を限定する方向で制度改正を行ってきた方向性に逆行する」と指摘し、社会合意の見通しについても「安全面の観点から懸念がある」と評した。
 2番目のB案は、中型免許一部年齢条件等緩和案だ。総重量5t以上7.5t未満については18歳で運転経験を問わずに取得を認めるという案だが。これについても、「安全面の観点から懸念がある」とA案同様に厳しい評価をしている。
 最後のC案は、小型貨物車を含めた貨物自動車の教習を貨物自動車で行う案で、EUと同様の制度の導入だ。貨物自動車がほとんどを占めることになる総重量3.5t以上7.5t未満の自動車を運転可能となる免許区分を新たに創設し、18歳で運転経験を問わずに取得可能とする。
 この案に対する警察庁の評価は、総重量3.5〜5tの安全対策が免許制度上担保され、普通免許の対象を限定するという従来からの制度改正の方向性にも合致する、と肯定的なものだ。
 さらに、交通事故被害者を含めた社会合意の見通しについても「車両の特性を十分理解した運転が期待されることから、社会合意の可能性は存在する」とし、唯一可能性を持つ案としての評価を与えた。
 このC案を見て、業界関係者がまず思い起こすのは、「架装減トン対策を要望した結果、中型免許が創設された」という前回の苦い経験だろう。
 だが、一方で交通事故遺族からは「普通免許の拡大や中型免許の取得年齢引き下げは、交通事故を増やすことにつながることであり、受け入れられない」との意見が出されており、C案についても「まだしも交通事故防止の観点からも、考慮に値する」との評価だ。
 ポイントは、18歳という年齢だ。若年者の雇用対策として考えれば、18歳でトラックを運転可能にするためには、これしか方法はないのではないか。また、7.5tまで運転できれば、コンビニの配送トラックがほとんどカバーされるという。
 18歳でトラックを運転できる制度さえできれば、あとはお金の問題となる。トラック協会が取得費用の一部を助成することも議論されよう。
 いずれにせよ、毎年数千人の命が自動車の事故により失われているのは事実で、ましてや交通事故被害者遺族の心情を考慮すれば、運転免許制度に緩和はあり得ない。C案は一考に値するのではないか。

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takeda