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日本流通新聞12月2日付紙面から

社説:労災事故「憂慮すべき」事態

 陸上貨物(トラック)運送事業の労働災害が増加傾向だ。厚生労働省によると、労働災害は長期的には減少傾向にあるが、トラック運送事業は過去20年間、「減少傾向が見られない」という。
 なかでも荷役作業での労働災害は毎年1万件近く発生し、労災全体の約1割も占める。しかも、荷役作業での労災の3分の2は荷主先で発生し、そのうちの8割はトラックのドライバーが被災している。
 全日本トラック協会では、荷役作業時における労災事故の7割が荷主等の事業所で発生している事態を重く受け止め、今年1月に234の荷主団体で文書による要請を行った。
 しかし、2013年の労災発生件数については10月末現在、全産業の死傷災害は減少しているが、トラック運送事業は増加(前年同期比2.4%増)している。
 厚生労働省は11月、ついに「このままの傾向が続くと、陸上貨物運送事業においては、死傷災害が4年連続増加という極めて憂慮すべき事態になることが懸念される」と、全日本トラック協会に対し「労災事故防止の徹底」を文書で要請した。
 国土交通省の統計指標でも今年の輸送量は、昨年を上回って推移している。一般論として、「経済活動が活発になると労働災害が増加する傾向がある」と言われているが、現在のドライバー不足の中で、輸送量が増える年末繁忙期の対策は、厳しいものがある。
 トラック運送事業の「人手不足感」は、「都市部以外でも苦労するようになった」「入ってきても年齢による体力的な問題で辞めていく人も少なくない」「荷物が増えている反面、人手不足という問題で苦労している」などの声を聞く。新たに社員採用や増車できるトラック運送企業は限られている。結局、しわ寄せはドライバーや傭車、下請けへ向かう。
 トラック運送業界は今年3月、荷役事故防止に向け、荷主団体への要請行動、3月には厚生労働省から「陸上貨物運送事業荷役作業の安全対策ガイドライン」が発表された。
 このガイドラインは、研修も含め労災事故防止セミナーが9月13日を皮切りに全国でスタートさせた。
 全ト協は荷役作業の事故防止を、従来に増して荷主・業界全体に周知徹底する方針だ。
 ただ、運ぶ側だけで事故をなくすことはできない。荷主等との連携・協力がなければ「憂慮すべき事態」から脱することはできないだろう。
 厚生労働省ガイドラインが指摘する「労働災害は長期的には減少傾向にありますが、陸上運送事業については、過去20年間、減少傾向が見られません」が意味している。

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