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日本流通新聞6月24日付紙面から

社説:書面化は緩やかに普及を

 国土交通省が進めるトラック運送取引の書面化に対し、業界内で不満、懸念が渦巻いているという。
 同省自動車局は、こうした不満や懸念の払拭に向け、全国各地のトラック協会に出向いて事業者との意見交換を進めているが、地域によっては「なぜこんなことをするのか」などと反対意見が続出したところもあるようだ。
 ある地方トラック協会での意見交換では、事業者側から「業界の要望は標準運賃の設定だったが、出てきた回答は書面化だった」との指摘があった。
 最近業界内では、書面化を中型免許問題になぞらえる声がよく聞かれる。中型免許問題は、そもそも4t車に4t積めないという「架装減トン対策」に端を発しているが、業界が架装減トン対策を行政に強く求めた結果、導き出された結論が中型免許の創設だった。書面化も、標準運賃設定など、行き過ぎた規制緩和の見直しを求めていたのに対する行政の「回答」であり、要望に対して別のものが出てくるという意味で同じだというのだ。
 書面化に対する業界の不満の代表的なものは、書面の発出がトラック事業者にだけ義務付けられ、荷主など発注者側に法的な効力が及ばない点だ。このため、地方トラック協会との意見交換では「運送の発注側に義務付けることが先決」との意見や「荷主にも罰則をかけられるよう、法改正を行うべき。今の内容ではダメだ」などとする異論が目立つ。
 また、書面化に一定の理解を示す事業者も「時間をかけてやるべき」、「慣れるまで一定期間が必要」、「3月施行は拙速すぎる」などと試行期間を設けることを求める意見も少なくない。
 国交省が書面化を推進するのは、運賃・料金に反映されない手待ち時間の発生、契約外の附帯作業強要といった運送事業者にとって非効率な商慣行を是正するためだ。
 この点は業界側も異論はなく、むしろ歓迎するはずだ。ではなぜ、不満や懸念が渦巻くのか。手法に問題があるのではないか。
 国交省は、省令改正で事業者に書面化を義務付ける一方、当面は行政処分の対象としない方針に転換した。荷主等に法的効力が及ばないこととのバランスをとったものだが、本来であれば、多くの事業者からの指摘にあるように、荷主等にも罰則がかかるような制度設計とすべきだ。今それができないのであれば、あえて省令改正にこだわることなく、ガイドラインによる運用で緩やかに書面化を普及させていくべきではないか。

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