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日本流通新聞4月22日付紙面から

社説:書面化、効果不十分なら法改正を

 国土交通省がトラック運送契約の書面化推進ガイドライン案をまとめ、発表した。多層構造の適正化、事業者の交渉力向上という2つの観点から進めることにしたもので、書面化を徹底している事業者が全体の4割にも満たない実態を踏まえ、義務付けではなく「ルール化」にとどめ、曖昧な口頭連絡から「書面を出すこと」への移行に重きを置いた。
 書面化は、省令改正によりトラック事業者に発出を求め、標準運送約款改正により荷主に提出を求める。
 トラック事業者に対する規制として運用するのではなく、違反していた場合でも行政処分の対象とせず、当面はガイドラインを用いてルールとしての励行を求める。省令改正では、荷主にまで拘束力が及ばないため、バランスをとった格好だ。
 肝心の荷主に対しては、現行の標準運送約款では荷主が発出する運送状について「運送事業者側の請求があった場合に運送状を提出しなければならない」とされ、運送事業者からの求めがなければ発出しなくてもよいという位置づけとなっているが、これを「事業者が不要とした場合を除いて提出する」に改め、荷主側からの書面発出をより明確に求めることにした。
 書面化の目的の1つは、実運送事業者の運転時間基準遵守や手待ち時間の解消のほか、無償での附帯業務提供といった商慣行を是正することだ。
 トラック運送業の労働災害の7割は荷役作業で発生しており、さらにその7割が荷主の庭先で起きている。このため厚生労働省はトラック運送業の労災防止に向けて荷主への協力要請を強めている。厚労省によると、荷役作業をどちらが行うかが契約書面で明確になっているのは、荷役作業中の死亡災害のうち4分の1にとどまる。同省では、対策を確実に実施するため、荷役作業を運送事業者と荷主のどちらが行うか契約上明確にするよう求めている。
 一方、厚生労働省は自動車運転者の運転時間などを改善基準告示として定めているが、昨年1年間のトラック運送事業の違反率は64.1%と高い。なかでも最大拘束時間が53.7%と高く、休息期間が39.5%、総拘束時間が38.2%と高い。長時間の待機時間発生や無理な運行依頼などが背景にあるとみられる。
 国交省は来年3月までに書面化を施行したい考えだが、その後の効果を検証するために、荷主庭先での労災発生状況、改善基準違反率などを注視し、効果の発現が不十分な場合には、法改正による荷主への書面化義務付けも視野に入れるべきではないか。

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