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日本流通新聞1月21付紙面から

社説:過ぎたるは及ばざるがごとし

 18日朝の東京外為市場で、円相場は一時、1ドル=90円台をつけた。2年7ヵ月ぶりの円安ドル高水準だという。日銀が追加的に金融緩和を行うとの観測などから、円が売られている。
 円安による企業の収益改善期待から株価も上昇しており、18日の日経平均は前日より303円高い1万913円で取引を終え、2年9カ月ぶりの高値となった。
 一方で、円安による原油価格高騰で、国内燃料価格の高騰が懸念されている。
 資源エネルギー庁が発表した15日時点の軽油店頭価格は、前週比1.2円高の129.7円と6週連続で値上がりした。8カ月ぶりの高値水準だ。同庁では「原油価格の高止まりに円安傾向が重なり、原油の輸入価格が上昇した」と分析している。
 トラック運送業界には「円高になっても燃料価格は下がらなかった」と円高にもかかわらず軽油価格が高止まりしたことへの不満が強い。ところが、円安になると燃料価格はすぐに上がる。静岡県トラック協会の大須賀会長は「元売りは先物を買っているので、すぐに値上げというのはおかしい」とけん制し、軽油引取税の旧暫定税率廃止も求めた。
 15日に閣議決定された2012年度補正予算案に、一定の環境性能を満たす大型ディーゼルトラックの購入補助として15億円が計上された。業界の要望は燃料高騰対策だったが、現時点では政府として燃料高騰対策を打ち出す機運がないため、燃費対策、環境対策として低燃費で低公害な大型ディーゼル車購入への補助を行うことにしたものだ。
 過日の自民党トラック議連総会では、片山議連事務局次長が「補正予算を第一段階としてさらに検討したい」と述べ、細田議連会長も「今後円安や世界的な原油高騰が予想される中で、以前と同じような対策が必要になるだろう」と述べて2008年高騰時に設けられた200億円規模の補助金と同様の本格的な価格高騰対策に含みを残している。
 日本の化石燃料輸入額は20兆円を超え、為替が1ドル=110円になるとこれが4兆円増えるため、金融緩和の効果を打ち消してしまう、との指摘もある。
 甘利経財相は「過度な円安になれば輸入物価に跳ね返り、国民生活にマイナスの影響もでてくる」と発言。石破自民党幹事長も「円安になって困る産業もある」と述べるなど、過度な円安に警戒感を示す声も出始めた。適正な為替水準は一体いくらなのか、答えは1つではなさそうだが、何事も過ぎたるは及ばざるがごとしであろう。

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