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日本流通新聞12月10日付紙面から

社説:物流コスト削減へ残る無駄は?

 国土交通省、経済産業省など関係省庁による、新しい総合物流施策大綱の策定に向けた有識者検討委員会の第2回会合が開かれた。
 政府の総合物流施策大綱が来年、目標達成期限を迎えることから、次期大綱策定に向けた検討を行い、来年4月を目途に提言をまとめる。
 第2回会合では、荷主企業と大手物流企業からのプレゼンテーションなどが行われたが、中国や韓国、台湾などアジア勢との熾烈な競争を背景に荷主企業からは「輸送コストの削減が喫緊の課題」(新日鐵住金)、「どうしてこんなに物流コストがかかるのか」(トヨタ自動車)などと物流コスト削減を求める声が相次いだ。
 企業にとって、物流コストの削減は永続的なテーマであろう。積載率の向上、在庫の削減、他社との共同配送、物流拠点の集約あるいは再配置など、企業は様々な物流効率化を追求してきた。物流アウトソーシング料金見直しの中で、物流事業者に運賃の引き下げも迫ってきた。
 物流コスト削減のために規制緩和が進められ、小規模トラック事業者が激増し、下請け取引が多層化して運賃水準が下落した。運賃の引き下げはドライバーなどの人件費にしわ寄せされ、人口減少・少子高齢化の中で物流業界では若年労働者の確保がままならなくなりつつある。
 次期物流大綱に向けた有識者委員会では、会議とは別に関係団体へのヒアリングも実施したが、全日本トラック協会に対するヒアリング結果によると、規制緩和により過当競争に陥り、先細る需要に応じて供給を絞らないといつまでも直らない、と主張している。さらに、零細業者が多く、運賃が下落しているため、ドライバーの賃金は低く、労働時間の長い3K職場となっていると指摘し、規制緩和を見直して、許可基準の厳格な運用や利用運送事業への規制などを進めてほしいと訴えている。
 「もう限界」なのである。荷主企業も考えられる一通りのコスト削減策を実施し尽くした感がある。物流大綱有識者委では委員の1人が「運賃を下げるなどの物流コスト低減ではなく、どこに本当の無駄があるかに関心を持ってほしい」と問題提起したほか、荷主企業も高速道路料金のほか、港湾コンテナヤード使用料、空港着陸料など、非効率な部分が残っているとおぼしきところへ矛先を向けた。
 日本経済を再生するためにも、どこに無駄があるのか、どこに非効率な部分が残っているのか、目を凝らしたい。

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