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日本流通新聞9月3日付紙面から

社説:監査に抜本的な仕組みを

 国土交通省自動車局が来年度組織・定員要求で、再び監査要員の増員を要求する。
 4月の高速ツアーバス事故を受け、事故を起こしたバス会社が名義貸しをはじめ多くの法律違反を犯していたことが発覚。国交省の監督責任が問われたためだ。
 トラック、バス、タクシーを合わせた自動車運送事業者は計約12万社。バス事故が起きた際、「320人で12万社を監督できるのか」との指摘が各方面からされた。
 とくにトラックや貸切バスは、規制緩和により新規参入が激増したが、法令遵守などの安全面は事後チェックで担保するとの建前になっていた。ところが、今回の事故で、事後チェックにより安全を担保するという仕組みが破綻していたことが露呈し、国交省は事後チェックの抜本的見直しを迫られることになった。
 同省は8月8日、自動車運送事業者に対する監査のあり方に関する検討会を立ち上げ、監査の抜本的な見直しに着手した。悪質な事業者を確実に排除する制度設計と、すべての運送事業者に対して網羅的に指導するための制度設計を検討する。
 監査要員の増員要求はこの一環でもあるが、国家公務員の削減が求められるなかで、一気に大幅な増員を図ることには困難が伴う。
 監査の抜本的見直しでは、監査体制の充実と併せて、効果的、効率的な監査の手法や実効性のある処分のあり方も検討する。効率的な監査では、デジタル式運行記録計(デジタコ)などIT機器の活用も検討することになる見通しだ。
 ただ、デジタコは価格が高いこともあって国交省の義務付け提案に業界が反発。車両総重量3.5t超の営業用トラックに義務付けるとの当初案も撤回を余儀なくされ、検討が仕切り直しとなっている。
 技術の進歩により、最近ではクラウド上のサーバーに直接運行データを送信する機器もあるという。ならば、時間・距離・速度の法定3要素だけをサーバーに送って蓄積し、国交省がサーバーにアクセスしてデータを読めるようなシステムを構築してはどうか。データを運行管理などに役立てたい事業者は別途デジタコを装着すればよい。
 国交省はいちいち監査に出向く必要はなく、事務所に居ながらにして事業者の運行データを把握することができる。もっとも、データがガラス張りになるため、プライバシー保護の問題が出る可能性はある。
 いずれにせよ、この問題は監査要員の増員だけで解決する問題ではない。何か抜本的な仕組みを考える必要があるのではないか。

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