社説:デジタコ、環境整備に期待
国土交通省が営業用トラックへのデジタコ義務付け検討会を約半年ぶりに開催した。
同省が昨年11月に立ち上げた検討会で、現在車両総重量8t以上の大型トラックに装着を義務付けている運行記録計を同3.5t以上の中小型トラックにまで拡大し、デジタル式に限る方針を打ち出したところ、東京を中心に業界が猛反発し、6千人を超える反対署名を集めて同省に提出する事態に発展した。
これを受けて同省は、改めて装着実態などを調査したほか、バス事故の対応に追われたこともあって、今回半年ぶりの開催となったものだ。
9日の検討会では、「3.5t以上」などの義務付け範囲案を「対象車両の範囲も広いものとする方向で検討」との表現で撤回し、まず普及や義務化に向けた環境整備から取り組む方向性を示した。業界の意向を踏まえて見直したものだ。
とくに東京でデジタコ義務化に対する反発が強いのは、短距離で短時間のルート配送などの運行形態が多く、運行管理が比較的容易なためだ。ハイスペックなデジタコでなくとも、アナログ式で十分対応可能なのだ。さらに、東京では自発的にドライブレコーダーの装着に取り組んでおり、死亡事故半減などの効果を上げているとの自負もある。
このため9日の検討会では、業界側委員から「アナログ式も選択できるようにすべき」、「ドラレコも評価すべき」といった意見があった。
最大の問題点は、導入コストだ。検討会でも「非常に高価であり、最近の経営状況から高コストに耐えられない」との指摘があった。
国交省が9日の検討会で示した今後の方向性案では、「機器面・ソフト面・システム面等における技術的な検討を含め導入に当たっての懸念に対応を行う」と記載され、技術基準を見直してより安価で簡易なデジタコ、ソフトでも認める方向での検討を行う方針を示した。
機器とソフトが安価になれば、導入のハードルが下がる。ドラレコであっても運行データを記録できるものは代替機器として認めればよい。こうした環境整備をまず進め、そのうえで普及・義務化にむけたロードマップを共有していく。
安全な運行を確保するための適切な運行管理は、今回の高速ツアーバスの事故を引き合いに出すまでもなく、運送事業者の責務だ。
国土交通省が態度を軟化させたことで、ようやく検討が進む方向となったデジタコ問題だが、トラック事業者が無理なく安全性の向上に取り組めるような環境整備が進むことを期待したい。