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日本流通新聞7月2日付紙面から

社説:荒唐無稽な6万社法令試験

  高速ツアーバス事故を機に、行き過ぎた規制緩和の見直しを求める声が強まる中で、国土交通省の対応が注目されている。
 同省の中田自動車局長は、専門紙記者会との定例会見で、トラック運送事業の参入規制見直しについて見解を問われ「安全対策強化の観点から参入の敷居を高くする方向となる」と参入時のハードルを上げる考えを示し、注目された。
 具体的には、参入時の法令試験や運行管理制度の強化をあげ、最低車両台数の引き上げについても「排除しない」と語った。
 最低車両台数の引き上げや法令試験の強化については、トラック将来ビジョン検討会に設置された最低車両台数・適正運賃収受ワーキンググループでも議論の対象となっているが、未だ結論を得るには至っていない。
 同ワーキングは昨年12月末に第5回会合が開かれて以来、半年間開催されていない。中田局長は「できるだけ早く再開して方向性についての議論をしたい」と早期再開に意欲を示している。
 また、民主党内で出ている、「行き過ぎた規制緩和を見直すべき」との指摘に対し、「トラックワーキングも党の指摘を踏まえて検討する必要がある」と述べ、ワーキングで参入規制の見直しなどを議論する必要があるとの考えを示した。
 一方、中田局長は、参入時の法令試験、運行管理制度、最低車両台数の規制強化について、「新たに参入する人だけに高い安全性を求めて、既存事業者には求めないということにはならない」と断言。参入時の資格要件を強めた場合、既存事業者にも同水準の要件を求める考えを明らかにした。
 つまり、最低車両台数基準を引き上げた場合には、既存事業者の営業所ごとの最低台数も引き上げ、法令試験を厳格化した場合には、厳格化した水準での試験を既存事業者にも受けさせるということだ。
 既存事業者の受験機会について局長は「民主党も事業許可更新制を提案しており、更新の際に受けてもらうのだろう」と述べている。
 大手、中小も含めて6万社のトラック運送事業経営者が、改めて法令試験を受けるという情景は、いささか荒唐無稽に感じられる。許可更新制についても、優良事業者にも大きな負担となるうえ、国交省のマンパワーで膨大な事務手続きを捌き切れるのかとの懸念も残る。
 中田局長も「私が言っていることは、理想論かもしれない」と認めている。理想と現実の間に、答えがあるのではないか。

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