社説:軽油高騰 自助努力の限界超す
3月の軽油価格が9〜10円急騰し、消費税抜きローリー価格で110円台を超えることが確実になった。110円を超えるのは、2008年10月以来で、3年5ヵ月ぶりの高値だ。2008年の燃料高騰時に国土交通省と公正取引委員会が「軽油価格高騰に対処するためのトラック運送業に対する緊急措置」をまとめた同年3月の軽油価格が108円台だったことを考えると、110円を超す水準は、トラック運送事業者の自助努力の限界を大きく超えているといわざるを得ない。
軽油価格の急騰を受け、全日本トラック協会は5日の正副会長会議で、5月15日を中心に全国統一行動を実施することを決めた。自動車関係諸税の軽減を求める決起行動は2010年11月に行ったが、燃料高騰でこうした決起行動を起こすのは2008年8月以来3年9ヵ月ぶりだ。
今回は、バス、タクシー業界、トラック労働組合とも足並みをそろえ、列島全体で総決起する。2008年8月の全国一斉行動では、中央と各県で同時並行的に決起大会や街頭行動などを行ったが、今回も東京では関東1都7県のトラック事業者らが集結し、日比谷公会堂で気勢を上げた後に街頭行動し、関係機関に要請文を提出することになる見通しだ。
2008年の前回行動では2万人規模の行動となったが、今回も同程度か、それを上回る規模となりそうだ。
「限界を超える」燃料高騰には、燃料税を引き下げる「トリガー条項」の復活、事業者の省エネ支援、燃料価格監視の徹底などが求められるところだが、まずは燃料サーチャージ制などにより荷主に転嫁することが第一だ。ただ、2008年当時も同年5月の調査で「一部転嫁できている」事業者は4割に達したものの、なお「まったく転嫁できない」との回答も5割以上を占めるなど実際にはそうたやすいことではない。
中東産ドバイ原油価格は3月平均で1バレル122.47ドル(2月平均は116.16ドル)と3年半ぶりの高値水準をつけた。イラン情勢の悪化などを受けたもので市場には「一時的」との見方もあり、足元では4月2日の価格が120ドルとなるなど一服感も見られる。
ただ、金相場の影響を受けるなど、原油市場には依然として投機マネーが大量に流入しており、業界関係者からは「実需に基づかない価格変動だ」と困惑の声が聞かれる。
この問題の解決には、顧客に粘り強く理解を求め、価格の高騰分を負担してもらうことが必要になる。原価に占める燃料油脂費の割合の変化などを数字で示し、理解を得る取り組みを続けてほしい。