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日本流通新聞2月13日付紙面から

社説:最低車両台数の論理矛盾

 全日本トラック協会が、国土交通省の将来ビジョン検討会ワーキンググループで議論されている、最低車両台数の見直しなどについて全国の意見集約を開始した。
 昨年末開かれた国交省のワーキングでは、これまでの議論の論点整理が行われた。論点は(1)最低車両台数の引き上げ(2)市場構造の健全化策(3)運賃規制強化——の3つだが、年末の会議ではいずれの論点についても賛否両論の意見が出され、とりまとめの方向性を絞りきれない状況となっている。
 最低車両台数については、「コンプライアンスと健全経営を確保するためには引き上げが必要」との意見がある一方で「最低車両台数をどこに設定するかは実態調査結果でも明らかではなく、事業の機動性確保の観点から引き上げは不適当」と全く逆の意見も出されている。
 国交省側は、引き上げる場合には既存事業者も基準を満たす必要があるとの見解を示しているが、これについては既得権益の観点から「一定期間の後、努力義務としてはどうか」との意見も出されている。
 業界内では新規参入の抑制を期待して最低車両台数の引き上げを求める声が強いが、既存事業者まで引き上げ後の基準を満たすことを求められるとすれば、話は変わってくる。
 事業者同士が合併でもしなければ、増車をして台数基準を満たさなければならず、供給を増やすことになってしまう。そもそも新規参入という「蛇口」を絞るべきとの観点で参入規制である台数基準のハードルを引き上げる議論をしているのに、逆にトラック台数が増えてしまうのでは本末転倒である。
 どうしてこうなってしまうのか。最低車両台数の根拠が規制緩和を境に変わってしまったからではないか。規制緩和以前は、営業所がある市町村の人口規模に応じて最低車両台数が定められていた。需要の少ない地方は少ない台数でよく、需要が多い大都市ではより多くの台数を保有することが求められた。
 ところが、規制緩和で全国一律5台とした際、その理由は安全運行のための管理体制を維持するうえで必要な事業規模とされ、規制の依拠するところが変わってしまった。
 このため、最低車両台数を引き上げようとすると、安全性の確保、向上が理由となり、需給の論理と矛盾が生じてしまうのではないか。
 いずれにせよ、全ト協が都道府県トラック協会に対し委員会などで議論したうえで意見を報告するよう求めるのは異例のことだ。業界の将来を左右するこうした論点に対し、正面から議論すべき時を迎えている。

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