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日本流通新聞12月19日付紙面から

社説:許可更新制、議論深めるべき

 トラック事業者数が3年ぶりに増加に転じた。国土交通省が発表した、2010年度末現在の事業者数は前年度比0.4%増の6万2988社で、前年度より276社増えた。2年連続で減少した新規参入が14%も増える一方、撤退は2年連続で減少したためだ。
 車両数規模別では、10台以下の小規模事業者の数が605社も増え、3万5766社となって全体の56.8%を占めた。
 同省では2010年度が景気回復期にあったためと見ているが、依然強いトラック運送業への参入意欲に改めて驚く。
 1990年の規制緩和以降では、1.5倍に増えており、新規参入の増加と小規模化の進展を背景に事業者の質の低下が指摘されて久しい。社会保険等に加入していない事業者は、国土交通省が厳しく指導し始めたため、減少傾向にあるものの、業界の未加入率は、なお社会保険で22%、労働保険で11%だ。
 こうした事業者がコストを不当に引き下げ、業界を過当競争の渦に巻き込んでいる、と指摘されている。
 規制緩和後の課題解決策を探るため、国土交通省は昨年10月から、将来ビジョン検討会の下にワーキンググループを設置して検討を進めており、年の瀬の12月27日にも会合を開く予定だ。
 そのワーキングでの検討において、「事業許可更新制」が浮上してきた。
 トラック運送事業の許可に一定期間の期限を設け、国による審査をパスしないと更新できない仕組みで、社会保険未加入などの不適格事業者を排除することが可能になる。事業参入後の事後チェックを適確に行えるようになることから、最低車両台数の見直しなどと並んで論点の1つとして浮上したものだ。ただ、一方で更新の際の要件次第では既存事業者に大きな影響が及ぶ可能性もある。
 仮に、参入時の要件を厳格に審査した場合、車両台数が5台以下の営業所があると許可を更新できず失効してしまうといった事態も想定される。逆に最低車両台数を更新要件にしないと、5台割れ事業者は排除できないことになる。
 行政のマンパワーも大きな問題だ。年間何万社もの更新事務をこなすのはかなりの作業量になると見られ、優良な事業者を審査免除とするなどの工夫も必要となろう。
 規制緩和後の課題解決のための1論点として浮上してきた許可更新制だが、国交省ワーキンググループはもちろん、業界内でも議論を深める必要がある。

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