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日本流通新聞12月12日付紙面から

社説:海外進出が大きな経営課題に

 国土交通省と全日本トラック協会が全国3ヵ所で共同開催した海外進出セミナーには、計約120人のトラック事業者が参加し、海外進出がトラック事業経営にとって現実の問題となっていること感じさせた。
 このところの「超円高」を背景に国内製造業の海外生産シフトに拍車がかかっており、国内輸送需要は今後、減少度合いを強めていくことも懸念される。
 国交省・全ト協のセミナーで自社の中国進出事例を紹介したツカサの小泉社長は「国内産業が空洞化する中で、生き残っていくために何をすべきか、考えなければならない」と述べ、海外進出などのグローバル化対応は不可避との認識を示した。
 小泉氏は「日本の物流品質は世界でもトップクラス。ミルクラン輸送、ジャストインタイム輸送はもちろん、固縛一つとってみても高品質だ」と日本の高品質なトラック輸送サービスの優位性も強調した。
 日通総研の大島担当部長も中国の実運送サービスレベルについて「過積載が横行していたり、トレーラーのタイヤに溝がないなど、事故の危険性も低くない。日本の事業者にもビジネスチャンスは間違いなくある」と話す。
 ただ、バラ色の世界が広がっているわけではもちろんない。明治大学の町田講師によると、中国でのトラック運送事業は2005年頃、粗利を33%も稼げたというが、最近では大手企業ですら税引き前利益率が10%を切ったという。
 中国のトラック運送事業者数は俗に427万社と言われており、その9割近くが1人1車のオーナードライバーだという。保険も福利厚生もないオーナードライバーの増加で運賃相場が下落し、現地の大手企業が実運送から撤退した例も報告された。また、諸経費も高騰しており「燃料費と高速道路料金が中国の物流にとって一番大きなリスクだ」(町田氏)ともいわれる。
 一方、ツカサの小泉社長は「中国からベトナム、ミャンマーなどを経由してインドまで道路が延びれば、今まで海運や航空で行っていた物流が欧州のようにトラックで行えるようになる。FTAの締結が進めば関税が撤廃され、国境間での実運送が活発化してくる」とアセアン諸国も含めたアジア全体でのトラック輸送のポテンシャルにも言及した。
 国交省と全ト協は来年3月、中国にミッション団を派遣する計画だ。セミナー参加者120人のうち、20人が参加意向を表明しているという。トラック運送事業者にとっても、海外進出が大きな経営課題となりつつある。

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