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日本流通新聞10月17日付紙面から

社説:原価賄う運賃が必要

 国土交通省と全日本トラック協会が共同で実施した実態調査結果で、トラック運送事業者の原価計算実施率が32%であることがわかった。また、このうち6割の事業者が「原価計算を行うことによって原価を超える運賃を収受できている」と答えている。
 実施率32%という数字が多いか、少ないかは見方が別れるかもしれない。調査は8001社を対象に実施し、2412社の回答を回収した。実態調査としてはそこそこのサンプル数だが、何しろ全事業者数は6万社である。また、「国の調査に回答する事業者はある程度優良な事業者」という受け止め方もある。つまり、実態の実施率はもっと低いのではないかという見方だ。
 少なくとも認可運賃時代には申請時に原価計算書の添付が義務づけられていた。1990年の物流2法施行により事前届出制へと緩和され、その後原価計算書の添付を省略できる範囲を拡大。2003年の法改正で事後届出制に一段と緩和された。
 運賃制度の緩和と併せて参入規制である最低車両台数規制も緩和が進められ、その結果新規参入が急増してトラック輸送の需給バランスが緩み、運賃下落に拍車をかけた。
 国交省などの実態調査では、運賃体系も多様化していることがわかった。貸切の距離制、貸切の時間制、積み合わせの個建て制(重量)、同(容積)等々だ。さらに、売上や仕入額に一定の料率をかけて決める、従価制または料率制運賃を採用している事業者も2割ある。
 運賃の決定方法でも、過半数が荷主主導で決められており、運送事業者側が提示したタリフで協議するケースは3割以下だ。従価制または料率制運賃では、荷主の売上や出荷額によっては原価を賄えなくなる場合もあり、料率制を採用する事業者の過半数が原価を賄えないと回答している。
 原価計算を行っている事業者の6割が原価を上回る運賃を収受できていると答えているが、計算さえすれば運賃が上がるというものでもない。原価計算で重要なのは、採算意識、コスト意識を持つことだ。荷主に運賃値上げを受け入れてもらえない場合でも、例えば手待ち時間を短縮してもらうことで採算性を上げるといったことも、原価計算を行って採算ラインを提示すれば説得力が増す。
 運賃水準動向は、需給に左右される部分も小さくないが、安全性の確保など公道を使うトラック輸送が一定の品質を社会から求められるものである以上、一定水準の原価を賄う必要がある。

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