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日本流通新聞8月8日付紙面から

社説:良識ある高速道路利用を

 被災地の復旧・復興支援を目的とした、東北発着トラックの高速道路無料化措置を巡り、常磐道水戸インターでUターンして東北以外の地域へ走行する「目的外利用」が横行し、社会問題化している。
 Uターンしようとする大型トラックがインターチェンジ周辺の生活道路に入り込み、周辺住民の住環境に悪影響を与えたためだ。
 大畠章宏国土交通相は7月26日の記者会見で「制度を悪用するようなことは止めてほしい」と業界に是正措置を求め、同月29日の会見では「トラック協会に対し不正行為は止めるよう要請したが、それでも悪用が続くなら、8月末で制度を終了することも検討せざるを得ない」と述べ、制度の打ち切りまで示唆した。
 これに先立つ7月22日、国交省道路局は、被災地の復旧・復興とは異なる目的でのUターン走行により、周辺地域の交通安全上の影響も懸念されるとして、こうした走行を行わないよう文書で全ト協に求めた。
 要請を受けた全ト協は即日、全国47都道府県トラック協会に対し、こうした目的外利用を行わないよう周知を求めた。
 全ト協は7月26日、水戸インター周辺に全国適正化事業実施機関職員を派遣し、現地で実態調査を行い、Uターン車両が確認されたため、今月1日から5日までの1週間、現地の茨城県適正化事業実施機関と共同で、Uターン車両の「監視」と各県協会を通じた是正指導を行った。
 その結果、目視で確認できるUターン車両は減少し、生活道路に入り込む大型車も激減したようだ。ただ、直ちにUターンせずに、時間をおいてインターに戻ってくるなど、目視では確認しきれない「目的外利用」がある可能性は否定できない。大畠国交相も5日の会見で、トラック利用者の14%程度が目的外利用であることを明らかにしている。
 今回の騒動、トラックが悪者扱いされているが、「悪用」や「不正行為」とするのは言い過ぎではないか。当初からこうした利用がされるかもしれないことは想定されていたことであり、国交省でも「違法ではなく、不正でもない」(道路局)と話している。
 運賃水準の低迷にあえぐトラックはコストに敏感だ。故に世界一高い高速道路料金の引き下げを求め続けてきた。ただ、トラックは車体が大きく、乗用車とは異なる。狭い生活道路へとところ構わず入り込むような運行は厳に慎むべきだ。良識ある高速道路利用が望まれるところだが、「目的外利用」を一切認めないというのであれば、それが不可能な制度とすべきだったのではないか。

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