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日本流通新聞4月11日付紙面から

社説:運ぶだけではない物流の「力」

 未曾有の大震災発生からちょうど1ヵ月が経過した。死者・行方不明合わせて2万7000人超で、今なお2330ヵ所の避難所で16万人を超える人が不自由な避難生活を強いられている。
 トラック運送業界は引き続き救援物資の緊急輸送に注力しており、出動台数は4200台を超えた。政府ルートの緊急輸送では、これまでに食料品1466万食、飲料水351万本、毛布46万枚などを輸送しているが、避難生活が長期化するにつれ、避難所でのプライバシーを保持するためのパーテーション、暖かい食べ物を調理するための調理器具、シャンプーなどが増加傾向にあるなど、避難所の生活改善のための物資へと輸送品目が変化している。
 日通総研の予測によると、震災の影響で国内貨物輸送量が当初予測の前年度比1・9%減から3%台の減少にまで落ち込むと見込まれており、とくに企業の工場が多数被災したため、生産関連貨物は当初の1・0%減から6%前後の減少へと大きく下方修正した。輸送需要の減退は、経営基盤が脆弱な中小運送事業者にとって経営問題にもなりかねず、何らかの支援策が必要となる可能性もある。
 国土交通省自動車交通局貨物課は、震災発生直後から24時間態勢で緊急輸送の手配に追われているが、この態勢は今後2カ月間程度続くことが見込まれている。
 この影響で、通常の政策立案業務の停滞が避けられない情勢となっている。国交省ではトラック産業将来ビジョン検討会のワーキンググループで最低車両台数や運賃料金の規制見直しを検討しているが、4月に開催予定だった第4回WGの開催見通しも立たない状況。
 被災により東北ではトラック輸送力不足が予想されるため、トラック事業者にレンタカーの使用を認めるなど、むしろ規制緩和を進めるなかで、規制強化につながる検討を行うことは困難との見方が支配的になりつつあり、検討自体が先送りされる可能性が高まっている。
 一方で、ヤマト運輸の持株会社であるヤマトホールディングスが、東北3県での「救援物資輸送協力隊」に続く復興支援活動として、宅急便1個につき10円を寄付すると発表した。今年度1年間続けるため、取扱個数が前年度並みなら総額130億円を寄付することになる。純利益の4割に当たる額と言うから驚きだ。
 同社では、被災者の生活支援にとどまらず、復興を見据えて保育園や学校といった生活基盤整備を支援する考えだ。物流の「力」は運ぶだけにとどまらない。

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