環境税、これからが本番
全日本トラック協会など運輸関連5団体が、自動車関係諸税見直しに関する民主党マニフェストの実現を求め、国会周辺で700人規模の要請行動を行った。
5団体の要望は、暫定税率の廃止、特定の産業に過度の負担とならない地球温暖化対策税など、民主党が09年の衆院選マニフェストで約束した事柄の実現に他ならない。
現実に、環境省や全国知事会が来年度税制改正で要望している地球温暖化対策税の姿は、輸入段階で全化石燃料に課税するとともに、ガソリンと軽油の暫定税率相当分である「当分の間」税率をそのまま温暖化対策税に衣替えするというもので、「マニフェストの内容にも納税者の期待にも甚だしく逆行するもの」(中西英一郎全ト協会長)となっている。
憲政記念館での要請集会で来賓としてあいさつした川内博史前衆院国土交通委員長が、08年の「ガソリン国会」で1ヵ月間暫定税率を失効させたことをあげ「野党の時にできたことが、なぜ与党になってできないのか」と述べると「そうだ」と合いの手が飛んだ。
トラックはじめ5団体のデモ行進が議員会館前を通過したその1時間ほど後、期せずして同じ議員会館内で開かれた民主党税制改正プロジェクトチームの地球温暖化対策税検討小委員会では、党としての温暖化対策税の基本方針案が提示された。
すべての化石燃料に課税する石油石炭税を5割増税して増税分を環境税として創設する内容だが、暫定税率相当分である「当分の間」税率については、厳しい財政に鑑み来年度も維持することを明記したが、環境税に衣替えすることは見送った。
中塚小委員長は「当分の間税率を温暖化対策税にしてしまうと、暫定税率撤廃という約束を果たせなくなる」とその思いを強調した。
環境税の転嫁によりガソリン、軽油は1㍑当たり79銭の増税になるが、民主党案では値上げを回避するため、税の減免措置を講じるよう政府税調に求める内容となっている。
また、軽油重課に関連するトラック・バスへの交付金については、大阪府の動向や片山総務相発言を念頭に、「国の責任で確実に予算措置すべき」と踏み込んだ。
党PTは、30日に他の主要事項とも合わせて党の方針をまとめ、政府税調に提言するが、環境税についてはなお導入反対意見が根強く残る。
環境税論議の舞台は、民主党政権で税制改正の決定権を持つ政府税調に移る。党の提言を政府がどのように咀嚼して具体化するのか。議論はこれからが本番だ。
(日本流通新聞2010年11月29日付)