拙速な新税導入は避けよ
来年度税制改正に向け、政府税制調査会が審議を開始した。
政権交代後2回目となる民主党政権下での税制改正作業だが、昨年と異なるのは、党の政策調査会が復活し、その下に税制改正プロジェクトチームが設置され、並行して審議が進められている点だ。菅首相は6日の政府税調で「党を通じて国民の意見を政策に反映させてほしい」と述べ、党との連携を要請した。
来年度税制改正では、法人税率の引き下げ、地球温暖化対策税(環境税)の創設などが焦点となるが、トラック運送業界にとっては、軽油やガソリンへの課税が環境税に衣替えされることに伴う営自格差、さらには運輸事業振興助成交付金の存廃が最大の関心事となろう。
環境税については、環境省が輸入段階での課税とガソリン税への上乗せ課税を提案。経済産業省も石油石炭税の課税強化を打ち出した。さらに全国知事会も軽油引取税の暫定税率相当分を「地方環境税」に移行する案を提示している。
環境省案の国税、全国知事会案の地方税いずれについてもガソリン、軽油の暫定税率相当分(当分の間の税率)をそのまま衣替えする案となっており、輸入段階で新たに課税される国税分が増税となるかたちだ。
政府税調より一足早く議論を開始した党税制改正PTでは、地球温暖化対策税検討小委員会を設置して検討を開始したが、6日の関係団体ヒアリングでは、産業界から「企業の海外移転、雇用の悪化など経済への悪影響が懸念される」(日本経団連)、「中小企業に新たな税負担をもたらすなら反対せざるを得ない」(日本商工会議所)、「環境に名を借りた単なる財源確保では全くの論外」(全国中小企業団体中央会)などといった発言が相次ぎ、導入反対の大合唱となった。
産業界は、税収を充てて行うとしている国や地方の地球温暖化対策の内容にも疑念を抱いている。国の温暖化対策予算は今年度で1兆1284億円で、地方公共団体の予算はこれを上回る1兆6400億円にも上る。地方の施策にはゴミ焼却灰のエコセメント化、森林整備・病害虫対策、レジ袋無料配布中止、里山整備なども含まれるという。
6日のヒアリングでは出席した民主党議員から「なんでも温暖化対策のお題目をつけて予算化している」との指摘がなされたが、これに対し石井隆一富山県知事は「国の1兆円にもいろいろなものが入っている」と答え、むしろ疑念を広げた。
国や地方自治体が国民のこうした疑問に答えられないのであれば、拙速な新税導入に理解は得られまい。
(日本流通新聞2010年10月11日付)