日本型物流システム、アジアへ
国土交通省が来年度予算概算要求で、日本型物流システムのアジアへの普及を図るための予算を要求する。
同省は今年5月にまとめた「国土交通省成長戦略」で、建設・運輸産業、インフラ関連産業の海外進出を盛り込み、我が国企業による公共事業受注や高速鉄道システム受注を支援していく方針を打ち出した。このため来年度概算要求では、官民連携による海外プロジェクトの推進に16億2700万円を要求していくことになった。
日本型物流システムのアジアへの普及支援もこれに含まれるもので、予算額に占める割合は小さいが、国内での需要拡大が見込めないなか、国内運送業も中国を中心としたアジアへの進出を現実のものとしてとらえるべき時に来ていることを示唆している。
我が国企業のアジアでの海外現地法人数は、97年度の6231社から07年度には9967社へと10年間で1・6倍に増えており、これに伴いアジアへ進出した日系物流事業者数も98年の470社から08年には863社へと1・8倍に増えている。
無論、ある程度の規模、体力のある企業ということになろうが、今後はトラック実運送事業者もアジア等への海外進出が課題となる。
国交省が今年7月にまとめた、トラック産業の将来ビジョン中間整理は、「チャレンジ精神に富み、相応の企業体力があるトラック運送事業者においては、アジアを中心に海外進出に積極的に取り組むことが考えられる」と海外への進出を促した。
留意点として、「荷主の現地ニーズをよく把握し、現地のトラック運送事業者では提供できていない輸送サービスを、我が国の優れた人材、車両、システム等のパッケージで提供するなど、十分な差別化戦略を構築していくことが重要」とも指摘していた。
新幹線などの高速鉄道もそうだが、トラック輸送についても車両だけでなく、安全で高品質なシステムとして売り込むことが重要、というわけだ。
将来ビジョンは、「すでに進出しているトラック運送事業者の協力会社として一定の需要を確保したうえで新たな需要を求めて進出するという形態も、リスクヘッジの視点から重要」とも助言している。
中国国内でのトラック輸送トンキロは96年から06年までの10年間で倍増しており、インド国内でも同様の傾向にある。市場はまだまだ拡大する余地を残している。
トラック実運送事業者の海外進出がリアリティを持って動き出す。
(日本流通新聞2010年9月6日付)