景況改善の今こそ適正取引を

全国中小企業団体中央会が毎月実施している「中小企業月次景況調査」で、7月の各指標(DI値=前年同月比で「良い」・「増加」から「悪い」・「減少」を差し引いた値)が、6月と比べて上昇した。
 業種全体の「景況」は8カ月連続の上昇で前月比3・4ポイント改善しマイナス37・2となった。マイナス30台は、07年9月期の「マイナス39・1」以来のことだ。
 また、「売上」DIはマイナス23・1(前月比7・0ポイント上昇)、「収益状況」DIがマイナス38・9(同2・9ポイント上昇)と、いずれも07年中頃の水準に回復していた。
 エコカー補助・減税や家電製品のエコポイントなどによる金属・機械関連業種を中心とした景況改善の動きに加え、猛暑の影響で需要が急増していることを裏付けた。
 ただ、中小企業の現状は、依然として低水準に止まっている業種も多く、先行き楽観できない状況にある。内需低迷の影響で、販売価格の低下や原材料の上昇、そして円相場の高騰、エコ関連の景気対策の終了など懸念材料が多いためである。
 一方、運輸業の各指標は全体平均を大幅に上回った。「景況」DIはマイナス27・7(前月比14・3ポイント増)、「売上」DIがマイナス4・4(同24・6ポイント増)と水面すれすれまで回復。「収益状況」DIがマイナス29・2(同15・8ポイント増)と、大きく上昇した。
 しかし、事業者の声を聞くと、「猛暑でビール、飲料関係は好調だが、相変わらず荷動きが悪化している状況に変わりはない」という返事だ。また、「猛暑効果」で同業他社から車両の手配依頼を受けた事業者は「手待ち時間が長く、コストに合わない運賃」水準だと嘆く。
 結局、トラック運送業界の下請構造の多層化が「運賃引き下げ」の要因だ。国土交通省が2年前に策定した「トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン」では、「元請事業者から5次、6次以降の下請事業者が実運送を行うことがある」と、多層化の進行を指摘した。
 トラック運送事業協同組合のナショナルセンター「日貨協連」が運営する「WebKIT」でも、「ヨロシク(4649)運賃」が問題になっている。元請から自社の請負能力にかかわらず仕事を受注して下請運送を行う運送事業者(「水屋業」)や実運送を行わずコスト管理のみを行う元請事業者の存在が市場構造を複雑にしている。
 だからこそ「下請・荷主適正取引」ガイドラインを「絵に描いた餅」にしてはならない。コストに見合った適正取引に向け、啓発活動の継続が必要だ。

(日本流通新聞2010年8月30日付)