自賠責返済、約束は守れ
トラック運送事業者を含む自動車ユーザーが支払う、自賠責保険料の積立金の大部分が国の一般会計に貸され、6000億円がなお返済されていない問題で、自動車ユーザーらから早期の返済を求める声が高まっている。
自賠責保険は、利益を出さない「ノーロス・ノープロフィット原則に基づく世界でも例のない制度」(福田弥夫日大教授)で、1955年度(昭和30年度)に創設された。
すべての自動車ユーザーが加入を義務付けられる強制保険で、保険料による運用益は国土交通省の自賠責特別会計にプールされていたが、これが貯まってきたこともあって、94年度と95年度の2ヵ年にわたり計1兆1200億円が一般会計に「貸し出され」た。
「貸し出され」た金は国債整理基金に組み入れられ、国債の償還や利払いに充てられている。
その後、02年度の政府再保険廃止の際、それまでに貯まっていた運用益2兆円のうち1・1兆円を保険料の引き下げに、0・9兆円を被害者救済対策に充てることになり、1・1兆円については02年度から07年度までの6年間でユーザーの保険料負担抑制に充てられた。
残る0・9兆円の運用益で重度後遺障害者への支援など被害者救済対策を行うはずだったが、このうちの約0・5兆円が未だに一般会計から返済されないため、残る積立金2300億円の運用益と積立金本体の取り崩しで被害者救済対策を実施しているのが実情だ。
このため、日本自動車会議所が事務局となって18日に開かれた「自賠制度を考える会」では、一般会計への貸し出し分について「被害者のための金だ」とする被害者団体と「いったんユーザーに返すべき」とする自動車ユーザー団体との間で「内ゲバ」も見られたが、返済後の使途については改めて議論し、今回は一般会計からの返済を求めていくことに特化する方向となった。
いずれにしても、運用益とはいえ元の金は自動車ユーザーが支払った保険料だ。その金が国債の償還や利払いに充てられているのは異常なことであり、自動車ユーザーだけが国の借金の返済に過分な対応をしなければならないいわれはない。
一般会計繰り入れ分の返済時期は、時の財務相と国交相の覚書で定められているが、これまでにすでに2回延期されている。しかも、最後に返済されたのは03年度で、04年度以降は一銭も繰戻されていない。3度目の返済期限となる11年度も財政状態は厳しいかもしれないが、約束は約束であり、守ってもらいたい。
(日本流通新聞2010年8月23日付)