健全な競争実現に期待

国土交通省が、社会保険等未加入トラック事業者に対する09年度1年間の行政処分状況をまとめた。処分を受けた事業者の数は、導入初年度の08年度が9カ月間の累計で44社であったのに比べ、09年度はこれが364社へと激増した。
 未加入事業者に行政処分を導入した08年7月から09年6月までの1年間でも処分事業者数は87社であり、09年度は多くの事業者が処分を受けたことがわかる。社会保険事務所や労働局などへの照会・確認作業がスムーズになってきたためということだが、あらためて未加入事業者の数の多さに驚きを隠せない。
 なかには、国民年金のほうが掛け金が安いため、運転手も厚生年金に入りたがらないという声もあるようだが、厚生年金への加入は事業者の義務であり、なにより将来の年金受給額が大きく異なってくる。従業員の幸せを考えれば、加入するのが当然だ。
 09年度の処分事業者数364社のうち、警告処分が259社、車両停止処分が105社だ。警告処分のうち、社会保険(健康保険、厚生年金保険)と労働保険(労災保険、雇用保険)ともに未加入だった事業者は66社、車両停止処分のうち両方未加入は36社だ。
 昨年10月からは、処分基準が強化され、これまで警告処分にとどまっていた、「従業員の一部が未加入で初回違反」の事業者もいきなり10日車の車両停止処分が科されることになった。このため、10年度の処分からは警告処分がなくなり、すべて車両停止処分となる見込みだ。
 97年度に9・0%だった社会保険未加入率は、06年度には26・7%に達し、労働保険未加入率も同様に5・3%から12・9%に上昇している。事業者の小規模化も同時に進展しており、巷間指摘される「規制緩和による事業者の質の低下」を裏付けたかたちだ。
 行政処分の導入など対策強化もあり、09年度の未加入率は若干ではあるものの改善している。未加入率は、社会保険が08年度の25・8%から24・9%へ、労働保険も同じく12・9%から11・8%へと低下した。対策強化の効果と断言するには早計だが、この傾向が今後も続いてほしい。
 7月7日にまとめられた、国交省の将来ビジョン検討会中間整理でも、社会保険等未加入事業者の問題等「正直者が損をしない」体制整備のため、不適正事業者の取り締まりの一層の強化に向けて、国交省は最大限の努力を行うこととされている。早期に健全な競争環境が実現されることを期待したい。

(日本流通新聞2010年8月2日付)