課題多い「営自格差」
国土交通省の桝野自動車交通局長が、来年度税制改正要望での運輸事業振興助成交付金制度の扱いについて、「全ト協に対する事業仕分けで、営自格差を前提に個別事業者の(軽油)購入費用に差をつけるという話があり、一方で燃料課税を環境の観点で再構成するという話があるので、これらをにらみ対応していく」と述べ、軽油などの燃料課税が環境税(地球温暖化対策税)化される場合、税率に営自格差を設けることを検討していることを示唆した。
今年5月の全日本トラック協会に対する事業仕分けでは、交付金制度そのものの「建付け」の悪さが問題視された。その際、交付金制度の根拠となっている「軽油引取税の営自格差」については異論はなく、その必要性について認識を共有した形となっていたが、具体的な営自格差のつけ方について、枝野行政刷新相(当時)が、軽油の税率そのものに格差を設けることを提案し、「総務省税務当局がOKといえばそれでよいか」と国交省側に確認を求め、桝野局長も「その方向でお願いしたい」と応じていた。
元々、軽油の税率に格差を設けることは、徴税技術上困難という理由で、それに代わるものとして交付金制度が創設された経緯がある。
総務省自治税務局も、今年5月時点での本紙の取材に対し「現在でも免税軽油を不正に流通させる事犯が後を絶たない。(トラックの)税率に格差を付ければ、さらに不正をしやすい土壌が生まれ、とんでもないことが起きる」(都道府県税課)と難色を示していた。
さらに、税率の異なる軽油を販売するためには、徴税手続きが複雑化・煩雑化するおそれがあり、そのためのコストもかかる。
もっと言えば、現在の交付金額は年間180億円だが、これをそのまま税率格差に反映させると1㍑当たりわずか1円程度の格差にしかならない計算となる。「営自格差」というからには、1㍑当たり5円なり、10円なりの差があって然りだが、そのためには膨大な減税財源が必要となるなど、課題は少なくない。
なにより、交付金に代えて税率に営自格差を設ける場合、現在交付金事業として行われている、安全対策、環境対策、適正化対策などが宙に浮いてしまうことにもなりかねない。
交付金制度については、昨年末の税制改正大綱で、「軽油引取税に係る運輸事業振興助成交付金の仕組みは、従来通り継続する」こととされており、これとの関係はどのようなるのか。今年も年末まで目を離せない状況が続きそうだ。
(日本流通新聞2010年7月26日付)