次の焦点は交付金制度
国土交通省に設置されたトラック産業の将来ビジョン検討会が中間整理をまとめた。
トラック産業は、産業活動や国民生活に不可欠な輸送サービスを提供しているが、昨今の厳しい経済情勢下で、営業利益と経常利益が赤字になるなど、大変厳しい状況になっている、との認識を荷主を含めた検討会メンバーが共有した。
売上高に占める物流コスト比率は、日本ロジスティクスシステム協会の調査によると、米国の9・28に対し、日本はおよそ半分の4・87(96年度は6・58)となっている。
中間整理では、こうした厳しい状況を踏まえたうえで、トラック産業が将来に向けて目標とすべきあるべき姿を示すとともに、規制緩和後の変化を検証し、克服すべき課題を整理した。
業界の関心も高い「規制緩和後の変化」については、10台以下の小規模事業者の増加、運賃・料金の下落、社会保険未加入などの不適正事業者の増大などのデータが示され、克服すべき課題として、新規参入時の最低車両台数のあり方と適正運賃収受に向けた取り組みをあげた。これらについてはワーキンググループを設けて検討を進める方針だ。
国土交通省では「小規模事業者はコンプライアンスの面や安全・労働面で適切に対応できていない。ワーキングでは、安全・労働面に適切に対応できる事業規模はどの程度かを議論してもらう。それにより、不適正事業者がいない事業環境を整備したい」(自動車交通局の志村務貨物課長)とその狙いを話している。
将来ビジョンではまた、小規模事業者の生産性向上、実運送事業者の海外進出などを将来に向けた目標としてあげ、中小企業庁、中小企業基盤整備機構、ジェトロなどと連携してトラック事業者の取り組みを支援していく方針を打ち出した。
安全・環境面では、Gマークやグリーン経営などを荷主にアピールし、品質の高さで選択される市場を構築していくべきと提言している。
業界の将来に向けたこれらの取り組みと規制緩和の見直しが相まって、少しでもトラック産業が明るい方向に向かっていくことが期待される。
一方、検討会の中間整理は、運輸事業振興助成交付金制度にも言及し、その存続を図ることが必要不可欠だと指摘した。交付金制度を巡っては、先の事業仕分けを踏まえて制度の見直しも検討される見通しとなっており、予断を許さない状況だ。
将来ビジョンが中間整理を終え、トラック行政の焦点は来年度税制改正と交付金制度の行方に移る。
(日本流通新聞2010年7月12日付)