ビジョン検討会 中間整理に期待

国土交通省に設置されたトラック産業将来ビジョン検討会が7日、中間整理をまとめる。トラック輸送産業が経済や社会にとって不可欠な存在である一方、経済のグローバル化や人口減少などにより国内需要が頭打ちとなるなかで、将来に向けた「あるべき姿」と健全な市場の実現のための課題を整理することがミッションだ。
 そのなかで、90年に実施された規制緩和後の検証が業界内では注目されている。
 90年の規制緩和では、事業免許性が許可制に、運賃認可制が届出制にそれぞれ緩和され、その後03年には、営業区域制度が廃止され、最低車両台数基準も全国一律5台に緩和された。
 規制緩和以降、新規参入事業者は増加を続け、90年度に4万社だった事業者数は6万3千社へと1・6倍に増え、最低車両台数の引き下げにより、車両数10台以下の小規模事業者の占める割合は90年度の42・5%から08年度には56・5%へと増大した。
 事業者数の増加と小規模化は、過当競争の激化と下請け多層化の進展を招き、運賃水準の下落によって事業者の質の低下が指摘されている。
 すなわち、社会保険未加入事業者の増加など法令違反が横行し、法令違反を前提とした運賃設定を惹起している。
 このような事業者の質の低下を招く小規模化に一定の歯止めをかけるため、国土交通省は新規参入時の最低車両台数基準見直しを検討するワーキンググループ(WG)設置をビジョン検討会の中間整理で打ち出すことになった。
 WGでは、現在5台となっている基準を引き上げる方向で検討を進め、具体的な引き上げ幅を来年夏を目途に決めるという。
 中間整理では、このほか既存の5台割れ事業者対策として、5台未満であっても運行管理者の設置を義務付けたり、5台の基準適用を厳格化することなども盛り込まれるようだ。
 ビジョン検討会のテーマは規制緩和の見直しだけではない。国内需要が伸び悩むなか、意欲的な事業者にあっては、アジアを中心とした海外進出に取り組むことも考えられる。
 中間整理には、ジェトロ(日本貿易振興機構)などと連携してトラック運送事業者の海外進出を支援していくことも盛り込む。海外支援だけでなく、小規模事業者の生産性向上に際しても、中小企業庁や中小企業基盤整備機構と連携していく方向を打ち出す見込みだ。
 7日の中間整理に期待したい。

(日本流通新聞2010年7月5日付)