高速新料金、なお視界不良
国会が閉幕し、事実上の参院選に突入した。各党とも一斉にマニフェスト(公約)を発表し、政策を競っている。
なかでも最も注目を集めているのが、与党となった民主党のマニフェストだろう。国民受けの良い政策ばかりがずらりと並んだ昨年の公約とは打って変わり、財政健全化を打ち出すなど現実路線に転換した。
マニフェスト発表の記者会見で、菅首相は消費税増税に言及し、自民党が提案した税率10%を参考に、今年度内に案をまとめ、超党派で合意形成をめざす考えを明らかにした。
一方トラック運送業界にとって関心が高い、ガソリン税などの暫定税率廃止については、昨年の衆院選で約束したものの「まだ、実現できていないこと」の欄に記載し、引き続き取り組むとしたが、玄葉光一郎政調会長は「2011年度の導入に向けて検討が進められている地球温暖化対策税と一体となって検討を進める」と述べ、暫定税率分も含めて温暖化対策税に振り替える可能性を示唆した。
減税による納税者の負担軽減を事実上断念したものと言え、「2・5兆円の減税を実施する」と書いた昨年のマニフェストと比べ後退だ。
ただ、自動車重量税と自動車取得税については、簡素化とグリーン化の観点から、全体として負担を軽減する、と書いた。
高速道路無料化についても、書きぶりは慎重になっている。今回のマニフェストでは、「無料化した際の効果や他の公共交通の状況に留意しつつ、段階的に原則無料とする」と記載され、玄葉政調会長は「引き続き段階的に進めていくが、無料化の影響について今社会実験を行っており、慎重に検討していきたい」と解説した。
もっとも、高速道路を全線無料化すれば、大都市周辺は大渋滞に見舞われることは間違いない。前原国交相は「都市部や交通量の多い所はロードプライシングの考え方がなければいけない」と述べて全線無料化には否定的な考えを示しており、この点は理解できる。
対する自民党の公約では、高速道路を「無料化しない」と明記し、新たな国費を投入することなく国民の利便性に資する割引制度を維持・拡充する、と記載した。
トラック運送業界にとっては、現在の割引制度の行方が最も気になるところだが、前原国交相は「どのタイミングで最終形を決めるかも含めて、官房長官、枝野幹事長、玄葉政調会長と相談しながら進めたい」と述べるにとどめており、視界はなお不良だ。
(日本流通新聞2010年6月21日付)