トラック支援に知恵を

政府の行政刷新会議が全日本トラック協会の交付金事業を対象に事業仕分けを行った。仕分けでは、各都道府県が支出する交付金を原資に、地方ト協から全ト協に支出される出捐金の仕組みについて「複雑」、「不透明」などと厳しい指摘があった一方で、大阪府を例にとって「地方自治体が交付を拒否した場合は仕方がないのか」、「金の出入りが複雑で不安定。もっとシンプルで安定した制度として青ナンバートラックをサポートする仕組みは考えられないか」と業界側に理解を示す発言もあった。
 政権交代を受けて早くから民主党支持を打ち出したトラック協会に対する仕分けとあって、一般メディアの注目も集め、仕分け終了後には中西全ト協会長を多くの報道陣が取り囲んだ。
 仕分けでは、運輸事業振興助成交付金の根拠となっている、軽油引取税の「営自格差」という考え方について異論はなく、むしろ「営自格差」は必要という認識を共有した。
 交付金制度を巡っては、昨年末の税制改正論議でも「今どき国の紙切れ1枚(通達)で地方に金を出させる仕組みはいかがか」とその「建付け」が問題視されたが、今回の仕分けでも知事が拠出を拒否すると交付額が大幅に減額されるなど、制度としての「不安定」さが論点の1つとなった。
 国土交通省の桝野自動車交通局長は、過去に法制化を検討した経緯を紹介して「どうすれば『建付け』がうまくいくのか、悩んでいる」と妙案がない実情を明らかにした。
 これに対し枝野行刷相は、交付金に代わる支援措置として、軽油引取税の税率そのものに営業用と自家用の税率格差を設ける「直接還付」案を提案。総務省税務当局がOKすればその方向で進めることが確認されたが、当の総務省は本紙の取材に対し「税率格差を設ければさらに不正をしやすい土壌が生まれ、とんでもないことになる」と反発している。
 現在の交付金額は営業用トラックによる納税額の3・2%で、交付額相当分を「直接還付」すると1㍑当たりの減税額はわずか1円に過ぎない。税の営自格差は、自動車重量税で56%軽減、自動車税でも25%軽減だ。仮に営業用トラックの軽油引取税を1㍑当たり10円相当の32%軽減しようとすると、1750億円も税収が減ることになる。現在の交付金の10倍の額が必要になるのだ。
 このように考えると、この「直接還付」案は、その実現性に疑問符が付く。透明で安定した営業用トラック支援策とするためには、さらに知恵を絞る必要がありそうだ。

(日本流通新聞2010年5月31日付)