交付金制度をより盤石に

全日本トラック協会がついに事業仕分けの対象となった。過去に問題があった50法人としてリストアップされた3月上旬から2ヵ月半。一時は「仕分け対象にならないのでは」との観測が強まったが、最後の最後になってリスト入りした印象が強い。
 50法人リストが公表された直後の3月10日には行政刷新会議による事前ヒアリングが行われ、国土交通省が全ト協の事業内容や国との関係を説明した。
 その時点では、国が適正化事業実施機関として全ト協を指定し、権限を付与している点、あるいは全国のトラック協会で造成された基金の総額が約1300億円に達している点などがポイントになるのでは、とも見られていたが、3月10日のヒアリング以降、行刷会議側からのアプローチはなく、一部の地方協会に対して調査があった程度だ。
 ところが、5月の連休明けから再び動きがあり、13日に2回目の事前ヒアリングが行われ、18日に発表された最終リストに入れられた。この過程も何か腑に落ちない。
 20日から始まった事業仕分け第2弾は「政府系」公益法人が仕分けの対象であり、民間の業界団体である全ト協はどうも不似合いだ。
 そして枝野行政刷新相は、全ト協仕分けの視座として「具体的な事業を国民の前で議論したうえで、制度改革につながるのか、現状の枠のなかで若干の改善がされるのか、それとも現状のままでよいのか、まさにこれからの議論だが、少なくともお金の流れ方やその根拠がわかりにくいということは間違いない。建て付けのあり方が議論の1つのテーマになる」と述べ、制度論が焦点になるとの考えを示している。
 全ト協が地方協会からの中央出捐金で行っている、安全・環境対策、適正化事業などの個別の交付金事業について、枝野氏はとくに問題意識を示しておらず、事業そのものよりも制度のあり方に仕分けの軸足を置いているようだ。
 枝野氏はさらに、制度としての問題点として「国土交通省の説明を踏まえれば、全ての都道府県が出さないとおかしいのだが、知事が『うちは出さない』というと出さない。非常に建て付けの悪い制度となっている」と述べ、交付の仕組みが不明確である点も指摘している。
 行刷会議側は、事業そのものの必要性、妥当性については一定の理解を示しているものと推測できる。論点が制度のあり方、建て方という制度論になるのであれば、制度の「建て付け」を良くし、より盤石なものとする方向での議論を期待したい。

(日本流通新聞2010年5月24日付)