国会での議論を尽くせ
高速道路新料金の6月実施が困難な情勢となった。料金割引と密接に関連する道路整備財政特別措置法(財特法)の国会審議に目途が立たないためだ。同法案を審議する予定の衆院国土交通委員会では、今週も他法案の審議を優先させる方針で、民主党の同委理事も「無料化との同時実施は時間的に無理」と述べるなど、民主党内では先送り論が強まっている。
上限料金を普通車2千円、中・大型車5千円などとした新料金制度を巡っては、前原国交相が4月9日に原案を発表したものの、多くの利用者にとっては実質値上げとなることから民主党内でも異論が相次ぎ、「見直す」、「見直さない」で迷走した。
民主党の小沢幹事長も当初は、新料金制度が現在よりも値下げになるものと思っていたという。ところが、同党トラック議員連盟の幹部が同月15日に「新料金では9割方が値上げになる。これでは参院選を戦えない」と報告すると、小沢氏は「なにぃ」と気色ばみ、21日の政府・民主党首脳会議で鳩山首相に制度の見直しを求めた。
首脳会議の場にいなかった前原国交相は翌22日、首相官邸に乗り込み、現時点では見直しは行わないものの、新たな料金のあり方については国会での審議を踏まえ国土交通省で総合的に検討する、とした考えを鳩山首相に伝え、了承された。
国会での審議とは、料金の割引原資を高速道路建設に転用できるようにするための財特法改正案の審議に他ならない。ところが、その財特法審議がままならない。民主党内では新料金制度について「無料化するといっておいて値上げでは背信行為だ」といった声が根強く、早期の審議入りに慎重なためだ。
財特法が成立すれば、割引と建設のための原資は利便増進事業という同一の「財布」となるので、割引を増やそうとすれば、建設を減らす必要があり、財布のなかの金の取り合いになる。多額の費用を要する外環道など、本当に必要な高速道路を建設するのであれば、財務省に掛けあって「財布」の中身を増やすべきだ。
国会会期末まで残り1ヵ月を切った。国交委ではこれ以外にも、北朝鮮関連の貨物検査法案、航空法改正案、海上コンテナ安全運送法案といった重要法案が山積している。このままずるずると審議入りができなければ、料金見直しの議論も進まない恐れがある。新料金の拙速な実施は避けるべきだが、会期中にしっかりと国会での議論を尽くし、民意を反映した料金の姿を示すべきだ。
(日本流通新聞2010年5月17日付)